童名マニュ仮説
自分の童名であり、与論ではポピュラーなのに意味が分からないのがマニュだ。ウシ(牛)のように、一目瞭然というわけにいかない。
1729年に琉球政庁系図座が調べた童名について、東恩納寛淳は「琉球本島に行はれた童名の殆ど全部を網羅して居る」(「琉球人名考」)と書いているが、マニュの音に近いものに、マニュクがある。
真如古樽(貴族) 真如古(士族) 如古(Nyuku)(平民)
Manyukuに原形を置いて、語尾のkuが脱落したと見なすと、Manyuは得られるが、しかしこれは貴族士族のものだから、それが与論でポピュラーになるのは考えにくい。語頭のマは、接頭美称ではないと考えられる。
方向を変えなけばならない。そこで、ウシ(牛)や松(マツ)のように、動物や植物に当たってみると、植物でふたつの可能性が浮上してくる。クロツグとクスノハカエデだ。
クロツグは、マニと呼ばれ、琉球弧ではクバの次くらいに聖なる樹木とされてきた。
マニ 沖縄、久高、多良間、西表
マーニ 永良部、沖縄、久米、慶良間、宮古、伊良部、石垣、西表
マニィ 奄美大島瀬戸内
マーニー 沖縄与那(『琉球列島植物方言集』)
この「方言集」によると、与論ではクルツグと呼ばれているが、明らかに和名クロツグからきているので、古形はマニ周辺の音を想定していい。
呉屋ではマニクとも言う。このマニクを元にすると、マニュは辿りやすい。
maniku > maniu > manyu(母音に挟まれたk音の脱落)
もうひとつは、クスノハカエデだ。これは、石灰岩の島に自生する常緑樹。
マニク 沖縄(辺土名)
マミカ 首里
マミク 沖縄
マンク 永良部
マンクギ 永良部、与論(『琉球列島植物方言集』)
与論のマンクギは、キを後からつけたものだから、マンクを想定していい。また、他の島での音をみると、祖形はマニク、マミクが考えられる。辺土名でマニクと呼ばれているなら、与論でのマニクもあり得るだろう。
するとここからも、同様にマニュは得られる。
さて、クバに次ぐほどの聖樹は童名にはなりにくいのではないかと考えると、より可能性があるのは、クスノハカエデのマニクではないかと思える。
そうだとしたら、マニュはマツ(松)と同じく、植物トーテムの名残りの童名だ。このマニク、マミク(クスノハカエデ)がどのように見られていたか、使われていたかを見ることで、確信を高めていけるかもしれない。粟国島のサイトで、クスノハカエデは建築材で葉は薬用とある。
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