「トーテムとメタモルフォーゼ」第1回:その全体観とシャコガイから出現する貝人
これから「トーテムとメタモルフォーゼ」の話をしていこうと思う。トーテムは、祖先である動植物や自然物のこと。琉球語では「大主(ウフスー、ウフシュ、ウパルズ)」という言葉の語感にその面影が残っている。メタモルフォーゼは変態、変容だが、ここでは脱皮の意味も含ませる。これは、「若返る」という意味のスデル、シヂュンという言葉として残ってきた。
「トーテムとメタモルフォーゼ」は、動植物や自然物を生命の源泉とし、その化身(メタモルフォーゼ)態として人や自然を捉えていた世界のことをテーマとしている。
琉球弧では、トーテムの系譜を辿ることができる。
[蛇・トカゲ・シャコガイ・植物・サンゴ礁・カニ・ヤドカリ]
それぞれのトーテムには、そのときの生命観・宇宙観が宿されている。だからこの推移にもこころの必然史とも言うべき重要な変化が刻まれている。それは人の感じ方や考え方の元になっているから、忘れてしまっていても、いまのわたしたちも腑に落ちてくる。むしろ、ものの感じ方や捉え方のなかに、トーテム段階の思考は色濃く残っていると言ってもいい。蛇の終わり頃からヤドカリまでだけでも、1万年はかけているのだから、それは不思議なことではない。
第1回は、先史時代を伝承や習俗、そして貝塚から読み取る「トーテム・メタモルフォーゼ仮説」の全体観をお伝えして、シャコガイの段階から入り、蛇やトカゲのことは、それ以降を辿ったあとに、触れることにしようと思っている。時代が古くなればなるほど情報量は少なくなるので、トーテムの仕舞いまで行ってからの方が、推理が働く面があるのだ。
とは言うものの、シャコガイの段階も見つかっている貝塚は多くない。いくつかある理由のなかでも重要なのは、シャコガイをトーテムとした時間がどうも短いのだ。しかしそれはシャコガイが重要ではなかったことを全く意味しない。むしろ、シャコガイから次の植物トーテム以降になっても、シャコガイは起点であり軸として忘れられずに重視されている。
なにしろ、シャコガイ段階になって初めてトーテムは性を持ち、終わりのヤドカリまで、トーテムの主は女性(あるいは女性性が強)かったのだ。シャコガイ・トーテムは女性の時代のはじまりを意味している。
トカゲの終わりは、人は死に気づいたことを意味している。世界中に「死の起源」の神話があるが、琉球弧ではそれはシャコガイ段階に当たることになる。死の発見という心の危機を、人はどのように乗り越えようとしたのか。貝塚を手がかりにしながら、貝塚人の思考のありようにできるだけ迫っていきたい。
※取り上げる主な貝塚・遺跡:宝島大池遺跡、屋我地島大堂原貝塚、徳之島面縄第3貝塚
【場所】大岡山タンディガタンディ(東京都大田区北千束1-52-6-2F./ 大岡山駅から徒歩2分)
【日時】第1回:5月25日(土)16:00~
【参加費】1000円、懇親会:1000円
第2回以降の情報は、下記にあります。
「野生会議99」つながるゼミナール④ トーテムとメタモルフォーゼ(サンゴ礁の夢の時間)喜山荘一
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