平敷屋トウバルのアダン・トーテム
平敷屋トウバル遺跡(2008)のⅨb層は、条痕文土器が出ている。それで貝塚時代早期と位置づけられているが、放射性炭素年代が4000±40BPを示すように、Ⅸb層は、植物トーテムの段階にある。
出土している貝類はたったこれだけだから、ここからのみでは判断しにくいが、貝が指示する植物トーテムはアダンだ。
カンギクは、殻の尖りがアダンの実のそれとなぞらえられている。チョウセンサザエは、葉。クマノコは分からないが、実の黄色が捉えられているのかもしれない。マイマイは、アダンのそばにいる。キバアマガイは殻のまわりが黄色いし蓋もオレンジだ。イソハマグリは、実の中心部の白い個所だ。ここは食べられる。
Ⅸb層からは「集積遺構」が検出されている。円形で「黄褐色」の砂がアダンの実を示している。
画像でみると、「集積」は、アダンの実の突起の集まりを示しているようだ。上図で「集積」の外に色塗りされているのが土器に当たる。この土器が条痕文系、トカゲ土器だった。
土器はその層のトーテムを指示するとは限らず、過去のものであることがしばしばあるが、ここでトカゲ土器が選ばれているのは、アダンの葉の繊維を示すのによかったということになる。島人は過去のトーテム土器の文様も覚えていて、トーテムを示すのに似たものがあれば、それで土器を作ったのではないだろうか。
Ⅸb層の上で次に遺物が確認されているのは、Ⅶ層だ。ここでは貝の構成が変わるが、植物トーテムからサンゴ礁トーテムへは移行しておらず、ここも植物トーテム、主はやはりアダンだと考えられる。破片のチョウセンサザエと完形の蓋はそれぞれ11個出土ているが、実と突起(あるいは葉)で対をつくっているのだと思える。
こうした対は、クモガイ15個とウミギク・キクザル科の45個にもみられる。実3個に対して葉が1個になっている。
Ⅶ層からは、クモガイとウミギクの「貝製品」が出ている。
この「製品」も、同じように、アダンの実を示している。
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