アンチの上貝塚の位相 17
アンチの上貝塚の4つの場は、次のようになる。
「この世にいるわたしたち」の8482人は延べ人数になる。ここで、シミュレーションを行う。女性には、ヒレジャコの破片が1個、男性には、イモガイの完形、殻頂、破片のいずれかで合計3個が与えられる。
女性:90人×1個(ヒレジャコ)×24回=2160(≒2144)
男性:88人×3個(イモガイ)×24回=6336(≒6338)
平均178人の集団が、24回のメタモルフォーゼ(スデル)儀礼を行った結果の延べ人数が8482人という数だ。
「あの世に還るわたしたち」は776人だから、4世代余りが入れ替わったことになる。ここは、数百年は営まれた貝塚なのだ。
それぞれの場で、ヤドカリとカニは次のように思考されている。
イモガイで完形や殻頂がある以外は、基本的に男性は「破片」が与えられるから、男性の数字は低く見積もらなければいないが、完形、殻頂に対する破片の重みが不明なので、単純に個数で計算したものだ。
いくつか、アンチの上人の化身態の決まりをあげてみる。
・男性は、イモガイ。
・ヤドカリの腹部は、チョウセンサザエかサラサバテイラ。チョウセンサザエとサラサバテイラはふたつの「をなり集団」を表す。
・ヤドカリの腹部について、女性は完形か殻頂、男性は破片が与えられる。1人1個を基本として揺れがある。
・宿貝は、シラナミ。破片は男性にも付与される。
・男性の鋏のひとつはイモガイだが、もうひとつは他の巻貝の破片が付与される。
カニ・トーテムのときと異なるのは、ヤドカリの腹部であるチョウセンサザエかサラサバテイラ、そしてシラナミの破片と、男性にも付与される貝は増えることだ。
上の表で特異なのは、「この世にいるわたしたち」の胞衣や鋏が、「あの世に還るわたしたち」よりも強化されていることだ。苧麻トーテムの具志川島では、そうではなかった。これは、「この世にいるわたしたち」の霊力が強くなければならなかったことを示唆すると思える。
全体としてもっと特異なのは、男性の数が少ないことだ。女性が90人なら、男性は99人程度いるはずだが、それより11人も少ない88人が想定される。これに符合するように、スデル場ではより男性は思考されている。
アンチの上人は、スデルたびに男性生命の出現を願った。それが、ヤドカリの右鋏75個、左鋏117個に及ぶイモガイの集積になったのだと思える。このことは暗い連想を過らせる。「貝交易」と呼ばれる行為のなかで、礁斜面に生息するゴホウラを捕獲する際に男性が「あの世へ還るわたしたち」になっていtったことを、これは暗示しているのではないか、ということだ。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント