アンチの上貝塚の位相 2
アンチの上貝塚の集積と小貝塚の位置を確かめてみる。
すると、集積と小貝塚は対応しているように見えてくる。
位置、フィッシャーの形態、サンゴ礫の有無などから、その対応は下図のようになる。
フィッシャーの形態、「細長形」と「円形」は、それぞれカニの「鋏(男性)」と「腹部(女性)」を意味する。サンゴ礫の有無は、「あの世」へ送るという所作だ。
小貝塚は、調査でのカウントは8つだが、貝塚人にとっては6群の意味をなしている。
ここで小貝塚と集積を対応させてみる。
集積のある北の方は長く利用された貝塚で、2万を越える貝が置かれている。南方の小貝塚の貝の配置は、基本的には自然の地形に則っている。ということは、小貝塚を決めたのちに、北の区での集積の位置を決めていることになる。
また、集積のある北の区では、アカジャンガーの土器も検出されているが、小貝塚では検出されていない。ということは、小貝塚は、あくまでカニが意識されていることになる。
サンゴ礫(焼けたものもある)による小貝塚の被覆は、「あの世」への送りを意味している。小貝塚5,6は、男性カニであり、小貝塚4,7は女性カニだ。小貝塚5,6に対応する集積1の、(アンボンクロザメ4、クロフモドキ2)という構成はオウギガニの鋏を示したものだ。小貝塚4,7に対応するⅡ層の貝は、「チョウセンサザエの蓋」を筆頭にするが、これはよくカニの腹部を示している。
では、サンゴ礫でおおわれていない貝は何を意味するのか。それは「あの世」へ送られないことを意味している。送られないとはどういうことか。
それは、ヤドカリへメタモルフォーゼするということではないだろうか。
集積4(クロフモドキ107、アンボンクロザメ10)と集積3(クロフモドキ66、アンボンクロザメ9)は左右で大きさのちがうコモンヤドカリの鋏だ(伊礼原D遺跡は、クロフモドキ20、アンボンクロザメ15)。そして、チョウセンサザエを筆頭にした小貝塚Ⅱ層は、ヤドカリの腹部。
小貝塚8は、女性性が極めて強く、ゴホウラ集積に対応する。(ゴホウラ6、アツソデガイ1、アンボンクロザメ2)という組み合わせは、をなり-えけり関係をよく示すとともに、カニであることもよく示している。それが、女性性の強い小貝塚と対応しているとすると、これはヤドカリの宿貝を意味しているのではないだろうか。
サンゴ礫に被覆されていないのはもうひとつあって、女性性の強い小貝塚3がこれに当たる。これはフィッシャーが利用されていない。対応する集積は2で、これも鍋底状の穴は掘られていない。そして(アンボンクロザメ9、クロフモドキ1)の組み合わせは男性カニを示している。 離れたふたつの貝群が示しているのは、男性カニと女性カニだ。これはつまり、ヤドカリが男性カニと女性カニの結合であることを示していると考えられる。
すると、よく意味の分からなかった「敲石兼魔石集積遺構」の意味も見えてくる。これは、ヤドカリの尾肢だ。
小貝塚と集積は、カニを「あの世」へ送るとともに、カニがヤドカリへとメタモルフォーゼすることを表現している。ぼくたちはメタモルフォーゼの現場を目撃しているのではないだろうか。
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