手広遺跡6層の貝類
手広遺跡では、貝類の個体数がカウントされていない。6層から出土している貝類は、阿波連浦下層式とされているが(新里貴之「琉球縄文土器」)、貝類はコモンヤドカリ段階を指示するようにみえる。
これらの貝のうち、6層で初めて出現するのは、アラヌノメ、オニコブシ、ヘナタリ、アンボイナ、ツノマタナガニシ、イオウハマグリ、ケガキ、ヒバリガイ、アンボンクロザメになる。このうち、アンボンクロザメ、オニコブシ、ヒバリガイの取り合わせは、ヤドカリ段階を想定させる。
隣接する段階について、これらの貝が出土する貝塚を挙げてみる。オウギガニ段階と共通するものも多いが、アンボンクロザメ、アラヌノメ、オニコブシ、アンボイナ、ヘナタリの5つの貝同時に出現するのが、平安山原のⅡ群である。Ⅱ群は、コモンヤドカリ段階を示す。
他の貝塚で多い鋏貝はマガキガイだが、その地位を占めるのが、アンボンクロザメなのかもしれない。アンボイナのような毒性を持つ貝が採られているは、男性性が強化されたことを示唆するのではないろうか。また、平安山原でコモンヤドカリ段階を代表したイソハマグリに該当するのは、3層まで出土が続くアラヌノメかもしれない。同様に、オニノツノガイに該当するのは、ツノタマナガニシではないだろうか。
コモンヤドカリ段階を象徴する場は、礁斜面だが、その貝類として、ギンタカハマ、サラサバテイラ、シロザル、ホラガイ、ヤコウガイも出土している。
阿波連浦下層式は、ツノメガニ・スナガニ段階の土器だから、土器の編年が示すように、奄美では、ツノメガニ・スナガニ段階の次にコモンヤドカリの段階に入ったことを意味している。しかも、6層の放射性炭素年代は、2770±80y.B.P.なのだから、相当はやい段階でヤドカリ期、つまりアマン世に入ったことになる。奄美でアマン世と呼ばれる理由もここにあるのかもしれない。
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