ヤドカリ・トーテムの段階
奄美大島笠利の用見埼、マツノト、安良川の3遺跡のトーテム段階にアプローチしてみる。ヤドカリであることははっきりしているから、ヤドカリのなかで区別を立てたい。
用見埼は7c、マツノトと安良川は6~8cであり、時期的に大きな違いはなく、砂丘上の立地も共通している。
マツノトでは、白砂層では干瀬や礁斜面の中・大形貝類を中心に採集、上部層ではマダライモ、リュウキュウヒバリ等の岸川潮間帯の小形種が主に利用されている。同じことは、シャコガイ類でも認められて、下部で20cmの個体が得られているものの、上部では15cm未満のものになる。
このマツノトの上層、安良川では、「岸側潮間帯の小形貝類が多い」。マツノト下部では礁斜面での採集傾向が高い。(黒住耐二「先史琉球の生業と交易-奄美・沖縄の発掘調査から-」)
この3遺跡では、ヤコウガイが大量出土していることも共通する。ここでは、ヤコウガイは、ヤドカリの化身貝だ。
マツノト
6世紀、大型・中型・小型、大型を中心に約半数に被熱跡、殻多い
用見埼
7世紀、大型、被熱はほとんどなし、殻
安良川
8世紀、小型、被熱なし、蓋(木下尚子「ヤコウガイ交易の可能性」)
ぼくたちはここにヤドカリオ・トーテムの変遷を見る。マツノト下層と用見崎は、コモン・ヤドカリであり、マツノト上層と安良川はムラサキオカヤドカリである。
コモンヤドカリは、まだ「太陽」性が強かったと思われる。それが被熱の意味だ。ヤコウガイの殻は、ヤドカリの腹部とみなされる。だから、殻が多いのは女性性が重視されたことを意味している。すると、蓋は、ヤドカリトーテムの段階では、カニの部分、つまり男性性を意味したことになるだろうか。
コモンヤドカリからムラサキオカヤドカリへの変遷は、女性性から男性性への転換も意味している。それは、ヤドカリの色にも表される。赤から青系である。あるいは太陽の象徴変換はここで行われているのかもしれない。
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