国頭安田遺跡のオウギガニ・トーテム段階の貝類
国頭の安田は、与論にも近いとあって関心をそそられる。貝類がもっとも出土した4層でも254体だから多くはないが、コンパクトに特徴を示している。これは、オウギガニ・トーテム(大当原式)段階のものだ。
(『国頭村文化財調査報告書第4集 村内遺跡詳細分布調査報告書』より作成)
結局のところ、カニの爪と腹部に関心は集まっている。安田の場合、なかでもオキナワヤマタニシを筆頭に小さな巻貝に象徴されている。これらは、殻の形がオウギガニの爪(鋏)に似ているとともに、硬い蓋がカニの腹部を表す。小さな巻貝でのカニ表現は約7割を占める。
これは同時にカニ・トーテム段階の島人が、自分たちをどう認識していかたを示唆するものだ。つまり、人は手で作り産む存在であると見なされたのだと思う。
また、オウギガニという干瀬蟹の段階では、陸産の貝類も矛盾とは捉えられていない。それは国頭という立地もあるが、干瀬が陸でもあるという側面が積極的に捉えられているためだと考えられる。
キクザル科のように突起のある貝は、構成比は低いが、カニを示している。カニが貝に化身した場合、貝に手足が生える。それが突起の意味だ。
オオベッコウガサのように岩化するが、棘よりは円形や扇形が意識される場合、カニの腹部との類似が重要だった。ヒザラガイは、オウギガニの腹節そのものだとみなされたのではないだろうか。
特異な、あるいは特別な位相を持つのは、ハナビラダカラで、これは爪(鋏)との類似が捉えられている。それは貝製品を見れば明瞭である。これは、オウギガニの爪(鋏)だ。
(『国頭村文化財調査報告書第4集 村内遺跡詳細分布調査報告書』)
ここでは、大型の貝類も爪あるいは腹部だとみなした。マガキガイは、シオマネキトーテムにこそふさわしいが、オウギガニの場合、幼体が採られたのではないだろうか。報告書では、「第4層でマガキガイ殻長がやや小さい印象があるが、他種はこの時期にほぼ一般的なサイズであった。ただし、計測個体が少ないため遺跡全体のサイズを反映していない可能性が高い」とあるが、この小ささは偶然ではないと思える。
ヒメジャコを筆頭にしたシャコガイも爪であり腹部であるとみなされたのではないだろうか。
この粗雑なつくりに見える貝製品も正面からみれば腹部であり、横からみれば爪(鋏)である。
貝製の小玉も撮る角度をもうひとつ増やしたい。
図解の方をみれば、これも爪(鋏)であり、腹部なのではないだろうか。
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