大泊貝塚のカニ段階からヤドカリ段階への推移
竹富島のカイジ浜貝塚が、ヤドカリトーテムの段階を持つことを確認できたので、同時期を持つ波照間島の大泊浜貝塚にも、それが当てはまるか、確認することになる。
(『下田原貝塚・大泊浜貝塚 第1・2・3次発掘調査報告』(沖縄県文化財調査報告書 第74集)から作成)
報告書では、出土量の多いDトレンチについて、「主体貝はヒメジャコ(10層)→サラサバティ(9,10層)→シラナミ(7層)、マガキガイ(3,4層)に変化することがわかった」と書かれている。
まず、ヤドカリの宿貝になる貝は、古い付き合いのチョウセンサザエには変動が見られるが、他、ツノテツレイシ、ニシキアマオブネ、コシダカサザエ、コオニコブシ、ムラサキイガレイシは、それまでゼロだったのがある層から出現するようになっている(そのまま継続するとは限らない)。
同様の傾向は、ヤドカリの化身貝と目される尖りのある貝でも見られる。オニノツノガイ、クモガイ、イボソデ、シロミオキニシ、コオニコブシ、オニコブシ、ムラサキイガレイシである。このうち、出土量も多く増加傾向を維持するのは、オニノツノガイだ。大泊浜貝塚のヤドカリトーテムを象徴するのは、オニノツノガイだと言っていいのかもしれない。
また、カニトーテムをよく象徴する岩化する貝のうち、オオベッコウガサ、ベッコザラは途中から出現が見られなくなる。
カニ・トーテムを象徴していると思えるのは、シレナシジミで、10層の32%から3層では8.8%まで構成比を落としている。
ヒメジャコとシラナミは、ヒメジャコがカニ寄りだと思えるが、どちらも構成比を挙げている。ヒメジャコは、ここではカニ貝とは見なされなかったのかもしれない。
大泊浜貝塚は、カニ段階よりも、ヤドカリ段階の層を多く含んでいるのかもしれない。
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