安良川遺跡のオカヤドカリピット
奄美大島の安良川遺跡ではオカヤドカリのピットが確認されている。
B. ピット状遺構(第 8図遺坑配置図・ピット・土坑断面図)
ピット状の掘り込みは 2箇所検出されている。ムラサキオカヤドカリはA-3区土層断面図にかかる。幅約 30cm深さ約 40cmの掘り込みの中に,詰まった状態で出土した。貝殻はチョウセンサザエの大小の殻に入っているがいずれも殻に閉じた姿で出土している。ムラサキオカヤドカリは現在奄美地区では天然記念物として保護されている種である。出土状態が重なってヤドカリが詰まった状態で出土していることからバスケット状の龍に入れられていたと思われるが不明である。また,食用していたのかどうかも不明である。まとまって殻に入った状態から判断して,湯がかれた物と思われる(第 6図,ムラサキオカヤドカリ出土断面)。近くには夜光員の入った掘り込みも確認されている。 B-5区撹乱区断面には幅約 40cm,深さ約 50センチのピットが 3層からの掘り込みとして確認されている。このような状況から敷きジャリ部分は住居祉としての可能性が残される。(『安良川遺跡 笠利町文化財報告書第 27集』)
これでぼくたちは、安良川遺跡がヤドカリ・トーテムの段階にあるのを知る。「敷きジャリ部分は住居祉」の可能性があり、これがオカヤドカリピットの付近であれば、これは死者の住居をあの世へ送るための儀礼がなされたものだと考えられる。この意味で、敷き詰められたものは、ジャリもオカヤドカリも同じ意味を持つ。また、前4期あたりでオキナワヤマタニシが敷き詰められた遺跡の例とも同じである。
黒住耐二は、「竹富島のカイジ浜貝塚でも大形のオカヤドカリ類の集中を確認している」(「貝類遺体からみた遺跡の立地環境と生活」)。ここではナガウニ類の土坑も見つかっている。これも、ヤドカリの化身貝とみなされたものだ。
意外なところから、八重山でのヤドカリ・トーテムの痕跡を確認することができる。
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