貝塚の貝とトーテム 2
こんどは採る貝には意味があるとみなしてみる。するとやはり、それは浮上してくる。
前1期。ニシキウズの模様はとぐろを巻いた蛇そっくりだ。(参照:「月刊 沖縄と貝 with 光」)
前2期。マガキガイは砂を這い、飛び上がるようにすばやく動く。体色もオキナワトカゲに似ている。(参照:「南島漂流記」)
ここで注目したいのは、前2期で「シャコガイ」が優占していることだ。シャコガイは動かない。けれど、岩場にもいるオキナワトカゲの佇まいと共通するところはある。そしてなんと言ってもシャコガイの外套膜はオキナワトカゲの肌に似ている。幼体は、ブルーなのだから、シラナミのそれにそっくりだ。
トーテムはオキナワトカゲに、シャコガイ(シラナミ)が追加される。蛇からトカゲへ、蟹からヤドカリへというのと違い、トカゲから貝への転換は唐突に思えるが、そうではなかった。シャコガイはもともとトカゲ貝だったのだ。だから、新しいトーテムは現トーテムの系譜のなかから生まれていると言うことができる。
前3期はキクザル科とアラスジケマンに注目する。キクザル科の何貝かは調べなければならないが、たとえばこういう証言がある。
キクザルガイ科のシロザルは,片側の貝殻が岩に固着するよう石灰化する貝で,殻が非常に厚い。転石を起こすとこの貝が見つかることがある。岩と一体化する点でシャコガイ類に似るためか,浜さんは「アスカヤ(ヒメジャコ)の兄弟分である」という(後略)(飯田卓、名和純「奄美大島北部, 笠利湾における貝類知識 エリシテーション・データをとおした人 自然関係の記述」)。
アラスジケマンは、イシンニャ(石の貝)と呼ばれている(同前)。また、アラスジという名の通り、その筋は、シラナミの放射筋と似ている。(参照:「木もれ陽」)。言ってみれば、キクザル科とアラスジケマンは、シャコガイ貝なのだ。
ここで重要なのは、島人はトーテム貝そのものを食べていない。前3期では5位に位置しているので、タブー視されているわけではないが、優占するわけではなく、むしろ主の化身態が選ばれているということだ。
前4期のオキナワヤマタニシは、苧麻トーテムを受けた苧麻貝と言える。
前4期後半から現れるチョウセンサザエは、干瀬貝。ここでふたたび選ばれるマガキガイは、トカゲと浜辺の二重の意味を持つことになる。後1期には、それは蟹の意味もかぶさってくるわけだ。
こうしてみると、ぼくたちは貝塚の貝類遺体の構成を見ることで、トーテムの段階を知ることができる、ということになる。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント