与那国島大泊浜貝塚の焼土製品
与那国島の大泊浜貝塚で出土した「焼土状製品」の胎土分析が行われている(「胎土分析から見た下田原式土器」「付編 与那国島大泊浜貝塚採集焼土状製品(仲座採集標本)の胎土分析」(山崎真治、仲里健、仲座久宜「沖縄県立博物館・美術館博物館紀要 / 沖縄県立博物館・美術館 編」2012)
(「与那国島で採集した考古資料」仲座久宜、羽方誠「与那国島総合調査報告書」「沖縄県立博物館・美術館別刷」2009)
・色調は橙褐色~暗灰褐色を呈する。
・調整痕を持つものもあり、土器片や土製品の可能性も考えられる。
焼土状製品1
・有孔虫、貝殻等の生砕物が多く含まれる。石英粒が多く含まれ、雲母、斜長石もみられる。
焼土状製品2
・1と同様。砂岩等の岩片も少量含まれる。
これを沖縄島南部の土器胎土の突き合わせてみる(「沖縄島南部における先史土器胎土の長期的変化に関する一考察」(山崎真治、仲里健「日本考古学」2015)。
もっとも近いのは、面縄前庭式(新)に相当する胎土だ。
面縄前庭式(サキタリ洞遺跡)
・石英、斜長石、雲母、砂岩、変成岩
大泊浜貝塚焼土製品
・石英、斜長石、雲母、砂岩、生砕物
大泊浜貝塚は、「遺跡は祖納集落の東約3.5㎞、 東端の東崎へ至る途中で牧場を北に抜け、 急峻な道を下ると北側海岸沿いの砂丘地に立地している」(「与那国島で採集した考古資料」)。
この立地からすれば、仲原式~浜屋原式の胎土とも近いと言える。
仲原式~浜屋原式(サキタリ洞遺跡)
・石英、斜長石、雲母、砂岩、生砕物、角閃石
胎土からいえば、大泊浜貝塚は貝あるいは蟹トーテムの段階を示唆している。立地や生砕物の多さからいえば、蟹トーテムの可能性が高いのではないだろうか。
著者は、「細粒の石英」は、「現地性の堆積物とは考えられない」としている。
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