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2018/01/21

トカゲ・トーテムの色と性

 ぼくたちはここでもうひとつ、考えなければならないことに突き当たる。下田原期の石斧が「緑」で土器が「赤」だったとして、それが男性色、女性色に対応していたとすれば、貝トーテムに入る前のトカゲ・トーテムの段階には、性と色は対応していたということになる。

 小さな可能性も挙げてみれば、すでに貝段階に入っている北琉球の色と性の対応を知っていたのかもしれない。あるいは、キシノウエトカゲを通じたトカゲ期特有の捉え方だったのかもしれない。とくに、オスの繁殖期の顎に赤みが増すのであれば、まだ女性性との結びつきは弱いと言える。つまり、土器の「赤」を継続する集団意志の必然性はないことになる。

 連想ついでに言えば、もうひとつあるのは、苧麻がトーテムになったとき、嘉徳式の第一文様帯には、青みがかったものが出現している。これは、苧麻の色を示したものだと言えるが、この段階では、青系は男性色という規定を受けていたはずだが、女性である土器に「青」を描くのは矛盾ではなかったのだろうか。

 苧麻にしても、身体を編む植物だということからすれば、女性性の強いトーテムだったと思える。しかし、色は緑であり、色自体はそのまま女性性には結びつかない。これは、現在に伝えられた刺青の色にも言えることで、黒を除くと、青から緑に見える色も女性色とは言えない。

 苧麻は、女性性の強いトーテムだが、その色は男性性が強い。両性に届くトーテムだから、霊魂との結びつきを思考されやすかったのかもしれない。 

 他方、宮古島の貝斧では、トカゲと異なり、色の規定を受けなくなる。しかし、これは殻の硬い部分が男性と見なされたことを意味しているのかもしれない。

 元に戻れば、土器が出土していない与那国島のトゥクバル遺跡では、ヤコウガイの蓋が大量に出土している。石斧に対してこれは女性が使っていたとすれば、ここでも「赤」へのこだわりは見られないことになる。また、南琉球のこの段階ではあの世は発生していないので、ヤコウガイは貝として女性であり、男性貝の規定も受けていなかったと考えられる。

 

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