« 無文尖底系土器とカニ・トーテムの変遷 | トップページ | 「民謡に歌われた貝・カニ・エビ」 »

2017/12/19

「宮古島のオカガニ類」(藤田喜久)

 宮古島から日本産オカガニ類6種すべてを採集(「宮古島のオカガニ類」藤田喜久)。

1.オオオカガニ(別名ミナミオカガニ、ギターサオカガニ)

・宮古島のマングロープ域や海岸付近の湿った場所で普通に見られる
・甲の体色が赤みを帯びた褐色
・マングロープ域や海岸周辺に巣穴を掘って生息している

2.オカガニ

・甲が濃褐色,はさみ脚が黄色,歩脚が褐色の個体が最も多く見られたが大型個体では甲が赤褐色であったり,薄青がかった褐色を示す個体も見られた
・海岸付近の林床,河川沿いの土手や畑の周辺,湧水の周辺などに巣穴を掘って生息
・基本的に夜行性で,夜間に摂食や放卵行動を示す
・主に植物(ススキ,サトウキビ,モンパノキ,オオハマボウなどの緑葉,アダンの実)であるが,他に昆虫類などの小動物や死肉も食 べる雑食性
・太平洋島嶼域において,重要なタンパク源

・石垣島の川平では,旧歴5月に降海するオカガニを「ウレンカン(放卵に海に降りるカニ)」, 6月に降海するオカガニを「フサーラカン(腐るほどに大群が降海するカニ)」。これ以外に「マドルンカン(産卵期以外に道に迷い出たカニ)」と呼ぶそうである。

・宮古島での方言名は「アラガン」であり,食用として利用されていたようである。多良間村では「ティンカラウティガン(天から落ちてきたカニ)」と呼ぶようである。,宮古の平良では「ていんからうていあらがん」とは,「天から落ちたカニ. (転じて)身よりのない一人者」の意味であると いう。平良市の天候に関する俗信の中に「田んばや浜のアラガン (蟹)が穴から泥を出していたら雨が降る」というものがある。宮古島の下地町与那覇では,御嶽に棲むオカガニを食べて不幸に見舞われた話もある。

3.ヘリトリオカガニ

・甲および胸脚が薄紫褐色あるいは濃紫褐色
・通常,岩礁海岸や海岸近くの洞穴付近に生息し,夜行性であることが知られている。.また小型個体は,洞 穴地下水域で良く見つかることが知られている

4.ヒメオカガニ

・「河口近くの潮をかぶらない場所で、植生等により陰になった場所の流木や石の下に潜む」と記述されているが,海岸の飛沫帯の転石下に潜んでいた

5.ヤエヤマヒメオカガニ

・宮古島の海岸飛沫転石帯において最も多産する種

4.ムラサキオカガニ

・生息状況や詳しい生態はほとん ど明らかとなっていない


 メモ。石の下に住む、というところが、貝の子を想起させる。「穴に住む」というところは、地下の他界の進展を思わせる。


|

« 無文尖底系土器とカニ・トーテムの変遷 | トップページ | 「民謡に歌われた貝・カニ・エビ」 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「宮古島のオカガニ類」(藤田喜久):

« 無文尖底系土器とカニ・トーテムの変遷 | トップページ | 「民謡に歌われた貝・カニ・エビ」 »