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2017/11/27

肥厚口縁系土器の奄美先行

 奄美の貝採取は、イノーでは大形種、そして干瀬・礁斜面の種も多いことが指摘されている。

イノー内でも大形種が目立ち、干瀬・礁斜面の種も多いことは、沖縄諸島の前4期とは異なり、同諸島の後1期の組成に類似し、貝類採集状況が徳之島において時代をさかのぼる可能性が出てきた。(黒住耐二「面縄貝塚の貝類遺体(予察)」)

 一方、森田太樹は、「奄美諸島における前5期の土器について」で、前5期の肥厚口縁系土器は、「口縁部の肥大化・文様の無文化・壺形の成行を始まりとして、しだいに口縁部の扁平化・幅広化、そして肥厚の消失という方向性で次の段階へと移行する様相が明らかにされてきた」と書いている。

 肥厚口縁系は、前5期より前に、沖縄諸島に先立ち、奄美で展開され始めている。このことは、黒住の指摘する状況と無関係ではないはずだ。つまり、サンゴ礁を貝とみなす思考が進展していたのである。内在的な理由を求めるとすればそれは、イノーが大きくはならず、すぐに干瀬に届くことが背景にあるのではないだろうか。


『琉球列島先史・原史時代における環境と文化の変遷に関する実証的研究研究論文集 第1集 琉球列島の土器・石器・貝製品・骨製品文化』

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