「貝符に類似する土器文様の検討」(中村直子)
中村直子は、種子島広田遺跡上層タイプに似た文様が「奄美に分布する兼久式土器に施されている」と指摘している(「貝符に類似する土器文様の検討」「東南アジア考古学会研究報告」2004.11)。
その似方だが、土器に施された文様は、貝符と全く同じではない。
それ以前の土器の型式学的変化からは系譜の引けない文様が施され、その雰囲気が貝符文様と似ているのである。
上層タイプの貝符は遺構ごとに貝符の雰囲気が似ていて、「限定された製作者が作成したもの」と考えられる。
1~5:突帯を持たない甕に沈線文を施すタイプ。
6~15:外面に1条の刻目突帯を施し、その上または上下に沈線文で文様を施すタイプ。
土器文様はきっちりと定式化はしておらず、様々なバリエーションがある。
a:直線的な文様。土器には曲線も施されるが、「直線的な文様モチーフは貝符文様に似た雰囲気」を持つ。
b:60度もしくは120度前後の角度を持つ。直線文の「屈曲部が直角になるものがほとんどない」。
c:ほとんど横方向に展開するが、13~15のように縦長文様を横に連続するものがある。
d:幅の狭い二重平行沈線文を多用する傾向。
A類文様と貝符は強い結びつきがある。G類は貝符の地理的分布の拡大とともに、類似する文様が土器にも施される。これは貝符出土量が群を抜いて多い種子島の土器には見られない。
ぼくたちは貝符文様を、蝶形骨器にひとつの達成をみる「蝶」モチーフのデザインが展開されたひとつだとみなしている。それは、兼久式以前、口縁部に突起を持つ土器にもみられるが、兼久式にまでそれは継続されていると見なすことができる。
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