くびれ平底系土器とゴホウラ、ヤコウガイ
くびれ平底系とされるアカジャンガー式は、奄美の兼久式と「明確に一線を画して区別することが困難である」(伊藤慎二『琉球縄文文化の基礎的研究』2000/12)。そこで、くびれ平底系の土器として共通に考えたい。
「肥厚口縁系」の「肥厚口縁」を、ぼくたちは干瀬と陸側の岩場とみなした。続く「無文尖底系」のなだからな曲線は、サンゴ礁の形態そのものとみなした。そして「尖底」から「平底」への変遷は連続的であるとみなされている。
そうなら、そこへ流れる思考も連続的であるはずだ。
そう考えるなら、底部の「くびれ」は、イノー(礁池)、干瀬、礁斜面の形そのものを表現したものではないだろうか。貝塚時代後期は、大和との貝交易で知られる。その際、重宝されたゴホウラ、イモガイ、ヤコウガイのうち、ゴホウラ、ヤコウガイは礁斜面に生息している。かつこれらは、男性が捕る女性動物という特異な位相を持った貝たちだ。ゴホウラの、男性が捕る女性動物の意味は、大和との「交易」でも双方にとって重要な意味を持った。ヤコウガイはどうかわからないが、少なくとも琉球弧の島人にとっては意味があったとみなせる。
貝交易の特に後半で、意味を強めたサンゴ礁の「礁斜面」を、この土器の形態は示しているのではないだろうか。それはある意味で、他界とのあいだにねじれが生じ、遠ざかったいくこと、あるいは地下の他界の発生を物語るものであるのかもしれない。
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