貝塚(琉球縄文)時代の土器変遷 2
伊藤慎二によれば、北琉球弧の在地系土器は、おおよそ9様式がある(『琉球縄文文化の基礎的研究』2000/12)。
前1期 爪形文系
・ヤブチ式、東原式
・明確な文様帯がなく、器面全体に隈なく施文を行なうのが特徴。
・口縁部に平行して数条の横位横列の爪形文を施文する一群が存在するが、それが接続する「条痕文系」の横位文様帯の成立にかかわる。
前2期 条痕文系
・曽畑式、室川下層式、神野A式
・口縁部と胴部に2帯の横位文様帯を持つものと、口縁部に横位・胴部に縦位あるいは斜位の文様を構成する一群が見られる。
・後者が接続する様式を規定した。
前3期 隆帯文系
・神野B式、面縄Ⅰ~Ⅴ式
・著しく収束した頚部と外反した口縁部の出現。大きな変化。
・「神野B式」には、「M字状の隆帯や貝殻腹縁状の圧痕文が見られる」。
前4期 沈線文系・籠目文系・点刻線文系
・沈線文系 仲泊式
・籠目文系 面縄東洞式、嘉徳Ⅰ・Ⅱ式
・点刻線文系 神野D・E式、伊波・荻堂式、大山式
・「沈線文系」は現在まで(2000年)のところ、沖縄諸島以北での分布が見られない。
・胴部の縦位文様は「隆帯文系」から衰退。後続する「籠目文系」「点刻線文系」に見られる鋸歯(きょし)状および菱形状の横位文様を施す胴上部の文様帯の成立に関連することが予想される。
・北琉球弧が二つの土器様式圏に分かれる唯一の時期。
・「点刻線文系」は横位文様帯が細分、重層化して発達することが特徴。後続する「肥厚口縁系」で衰退。
前5期 肥厚口縁系
・室川式、室川上層式、宇佐浜式、面縄西洞式、犬田布式、喜念Ⅰ式、宇宿上層式
後1期 無文尖底系、沈線文脚台系
・仲原式
・初期の段階では、南九州の縄文晩期土器の影響がうかがわれるが、徐々に消化して独自の展開を遂げる。
後2期 くびれ平底系
・フェンサ下層式、兼久式
・かなり短時間のうちに断絶的に終焉を迎えたと考えられる。
伊藤の観点は、土器変遷に連続性を見る点が分かりやすい。別のところ(「先史琉球社会の段階的展開とその要因」)で伊藤は、「爪形文系」から「条痕文系」の変遷をより微分している。
爪形文系古段階
・施文具の形態を直接的に反映した文様が器面全体に展開
↓
爪形文系新段階
・施文具の動作によって線的に連続した文様が加わる。
↓
条痕文系新段階
・それらの文様が主体化して胴上半部に施文域が集約する。
「爪形文系古段階」は点を、「爪形文系新段階」は線をイメージさせる。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント