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2017/09/16

蝶形骨器と土器

 伊藤慎二は、蝶・獣形製品と土器とを関連づけている(「琉球貝塚文化における社会的・宗教的象徴性」『祭祀儀礼と景観の考古学』)。

 蝶形製品は、前4期の点刻線文系土器群古~中段階(伊波・荻堂式)に発達し、点刻線文系土器群新段階(大山式)・肥厚口縁系土器群古段階(室川式)頃まで継続する。

 獣形製品は、前4期の点刻線文系土器群古~中段階(伊波・荻堂式)~前5期の肥厚口縁系土器群新段階(宇佐浜式)などに伴う。

 どちらも前4期を中心に盛んに製作された。

 伊藤はここで、蝶・獣形製品の複雑な意匠を生み出す「祖形」が存在したに違いないと考えている。

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蝶形製品の特に上縁部の形態に着目すると、左右対称の波状に角ばった突起部分が連なることが特徴的である。これは、前Ⅳ期の器物と比較すると、明らかに土器の口縁部に酷似する特徴である。(中略)土器口縁部の山形突起(波状口縁)のみでなく、土器口縁文様帯の縦位区画文とその左右上下を画する横位区画文に対応する刻線までも蝶形製品の中に見出すことができる。

 山形突起は、前Ⅱ期の条痕文系土器に初めて出現するが、その後もあまり明瞭でない時期が続く。しかし、前4期に市来式土器の影響で、北琉球の在地土器文化に長期にわたっておもに4単位の山形突起が定着する。

蝶形製品もこの同時期に、土器口縁部突起とその直下の口縁部文様帯の意匠を祖形に創出された可能性が極めて高い。

 つまり伊藤は、土器の形態が蝶形製品の意匠に取り入れられたと考えている。しかし、蝶形製品が蝶を模したものであれば、この順序は逆でなければならない。蝶形製品が、もっと言えば「蝶」が、土器口縁部の文様に反映されたのだ。

 また、獣形製品はイモガイを素材とするものが多い。本来は複数の獣形製品を組み合せて一つの完全な形をなしていたのではないかと考えられている。伊藤は、「蝶形製品の複数の部分製品を組み合せる例との共通性について充分検討の余地がある」と書いている。両者は、「同時代の遺物の中でも格段に入念に製作された製品であることは明白」。

 ぼくたちはここでも大きな示唆を得る。獣形製品は、貝で作られている。しかし、形態は蝶である。これは、貝と蝶の組みあわせを志向する琉球文身の思考と同じだ(参照:「刺青にみるトーテムと霊魂のアマルガム(徳之島と宮古島」)。しかも、素材となるアンボンクロザメやクロフモドキなどのイモガイは男性貝でもあり、ここに「蛇」も宿ることになる。

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