「蝶形骨製品の模型による原形復原の試み」(金子浩昌)
金子浩昌が、ジュゴンの骨模型から「蝶形骨器」の復原を試みている(「蝶形骨製品の模型による原形復原の試み」「Museum」2016.2)。
実際のジュゴンではないものの、精確な模型からの復原には迫真性がある。
この復原によって、「沖縄縄文時代の蝶形骨製品」での復原図に修正も加えられている。
ギガ浜の場合、「前稿の復原図よりも後ろばねの開きが大きいのは、結合部のほぼ溝とほぞをきっちり合わせたためである」。
この復原図の更新は、
島袋春美氏の復原図では単一式のように中室がコの字状になっているが、結合式であるので逆L字状にした。
アゲハチョウ類の後ろばねの形を直線と曲線を組み合わせて強調した表現である。
これらの復原から金子が挙げている気づきの一部を抜いてみる。
・ジュゴンの肋骨の湾曲を利用してチョウの飛翔を表現している。
・はねの文様は、一定の規則に従って彫刻されたものが多いと考えられる。中室がかならず彫られ、はねの端の波紋、尾状突起が意図的に表現された。
この復原が興味深いのは、形態だけではなく「穿孔」も忠実に復原することで、結合の仕方が考えられていることだ。
蝶形骨器は「垂下して使用された」と考えられているが、
結合式蝶形骨器には垂下のためとは明らかに異なる穿孔があり、その穿孔を前ばねと後ろばねを結合するための紐通しの孔と考え、実際に紐を通して組み立てることも試みた。
蝶形骨器の穿孔は径6ミリ前後の細いものと径10ミリ前後の太いものがある。
細い穿孔は前ばねと後ろばねを結合する役割があると考え、太い穿孔は前ばねと後ろばねの結合と垂下の二つの役割があると考えた。
金子は、穿孔の径は小さく紐を通す回数は限られるから、「強靭な繊維が必要とされたであろう」と推測している。
また、穿孔が前面の尖頭のわきにあけられていて紐を固定することができ、蝶形骨製品の表面がみえるように人の背や腕、差物に裏面をつけて固定したのであろう。その場合、前ばねは固定されるが後ろばねは動かすことが可能になる。
この辺りから、現物を見れないので、具体的に分からなくなる。
ぼくたちは、蝶形骨器を憑依型シャーマンが装着したものと考えている。付けたのは、後頭部だ。これが継承された姿は、シャーマン後継の一類型である祝女の後頭部の髪飾り、たとえばナナハベラに見ることができる。
こう考える者にとって、復原したいのは、
・上ばねと後ろばねの結合の他に、
・後頭部への装着。そして、穿孔を使って、長い紐を垂らす。
ということだ。この問題意識から復原を試みられないだろうか。
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