「琉球列島における縄文時代後晩期の貝製品と製作技術」(山野ケン陽次郎)
いつも専門用語に追いつけない分、理解が届かなくなるので、貝製品の名称からイメージが浮かぶようにしたい。
1.貝製腕輪
・腕が通る程度に孔を設け、環状に整形したもの。
これは見慣れていて分かりやすい。先島諸島には出土例がない。
2.貝製小玉
・巻貝を小形円盤状、円柱状に整形したもの。
「紐で連結して身体を飾った装飾品と考えられる」。
3.貝製管玉
・ツノガイ類の頂孔部分を研磨し、管状の装飾品としたもの。
「貝製小玉とともに腕や胸を飾る連結装身具としての利用が確認できる」。
4.貝製玉類
・貝殻本来の装飾が活かされた立体的造形。
5.獣形貝製品
・非対称形の貝製品。
・「人骨との確かな共伴事例がないものの、孔の周辺に明確な紐ずれ痕跡が確認できる資料が多く、人体やモノに長期間緊縛、固定されたことを想定できる」。
これは「蝶形骨器」との類似を思わせずにおかない。人骨に伴わないのもそうだ。死者と関連づけられていない。これは、死者はすでにトーテム動物の霊へと移行されていると考えられたことを示すのかもしれない。少なくとも、あの世へのパスポートとして見なされていない。
6.サメ歯状貝製品
・サメの歯を模した左右対称のもの
これは本当に鮫を模したものなのだろうか。それが分からない。仮にそうだとしたら、鮫トーテムの痕跡である可能性はある。
7.獣牙状貝製品
・貝殻を半環状あるいは三日月状に加工、片方先端をすぼませ、別の端部に孔や抉りを施したもの。
イヌ、イノシシの歯を模したものとも考えられている。
8.庇状貝製品
・帽子の庇状あるいは三日月状のもので、回転穿孔による孔や抉りが施されたもの。
装飾品の一種と考えられている。
9.鎌状貝製品
・鎌の形に似た弧状で、端部に抉りや孔が施されたもの。
シャコガイやゴホウラが用いられる。比較的大形。
山野は書いている。
貝製装飾品をみると、サメ歯状貝製品や獣形貝製品など当該時期に特徴的な貝製品は、沖縄諸島に出土数が多いものの、徳之島や沖永良部島など奄美諸島でも出土している。そして、より北方の奄美大島ではこの分布が薄れる傾向にある。さらに北に位置する大隅諸島ではこの種の貝製装飾品は認められない。よって、貝製装飾品はからみると、奄美諸島と沖縄諸島に「対峙する」様相は見えず、類似性を保ちながらも沖縄諸島から北方へ離れるにつれてグラデーションのように装飾文化が薄れていく印象を受ける。
これは大事なことを示唆しているかもしれない。
「獣形貝製品」から連想されるのは「蝶形骨器」である。「サメ歯状貝製品」は、サメであるかどうかは分からす、そうでないとしたら、思い起こされるのは、徳之島の手首内側や尺骨頭部、手の甲の刺青文様だ(cf.「徳之島の「針突き(tattoo)」デザイン」)。つまり、「サメ歯状貝製品」は「蝶」の一部なのかもしれない。それは奄美大島では途絶える。そのことは、奄美大島の手首内側の「蝶」文様と補完する形になっている。
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