隆帯文系土器とシャコ貝
貝塚時代前3期の隆帯文系の代表的な土器は、徳之島の面縄(おもなわ)前庭式だ。その名は洞穴の前庭から出土したことにちなんでいる。
面縄前庭Ⅰ~Ⅲ式(12~14・17)
口縁部に刻み目、結節、刺突などを施した数条の隆帯を横位に貼り付け。
面縄前庭Ⅴ式(16~18)
頚部に山形状、胴部には縦で、集合沈線。
隆帯文系のデザインは、貝をモチーフにしたものだと思う。シャコ貝だ。上の例でいえば、シラナミではないだろうか。
(久保弘文・岩井憲司「同種として扱われていたシラナミ類2種について」「平成18年度沖縄県水産海洋研究センター事業報告書」)
シラナミには外套膜の縁取りがある。「ふちどり斑紋」(外套膜縁及びその内側に白い縁取りのある卵円形の模様を有する)か、「黒点列」(外套膜周縁に沿ってゴマ粒大の黒点が連続的に列を成して見られる)である(「同種として扱われていたシラナミ類2種について」)。
この縁取りは、上図13,、14.、16に顕著な、土器の頚部を挟んだ「2条の細い刻目突帯」(堂込秀人「面縄前庭式の研究」)が、この縁取りに当たる。13、16の曲線は、貝の口あるいは外套膜のカーブとよく似ている。トガリシラナミになると、角度は鋭角になるから、16の直線はデフォルメでもないのだと思う。
縦の集合沈線は、シャコ貝の放射筋である。こうしてみると、隆帯文の土器は、シャコ貝にしか見えなくなってくる。
伊藤慎二の編年では、前3期は約4500年前に位置づけられている。ぼくたちは土器によって、貝トーテムの発生の時期を知ることができるのだ。
『琉球列島先史・原史時代における環境と文化の変遷に関する実証的研究研究論文集 第1集 琉球列島の土器・石器・貝製品・骨製品文化』
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