爪形文系土器と蛇
琉球弧でこれまでのところ最古とされる爪形文系の土器について、伊藤圭はそのなかの変遷を試みに描いている。
野国、ヤブチ式、東原式はこの順に推移する。
野国は、上下段の指頭痕を意識的につなげる。それは押し引きしたように縦に蛇行して連続してみえる。
ヤブチ式は、指頭痕を基調とするが、それはD字状になっている。横方向に器面全体に施される。
東原式は、真正爪を刺突した爪形文が特徴。
この図は、上から下へ(「連続的文様」から「単独的文様」へ)、左から右へ(「指頭痕」から「爪形文」へ)が変遷に当たると思える。
ぼくには指頭痕は、蛇のうろこにみえる。爪形文のなかには、「内面にも指頭痕が残るものがある」ので、土器はあるいは、とぐろを巻いた蛇の姿を原型のイメージにしているのかもしれない。これが器面全体に施されるのは、球のような対称性を志向しており、時間と空間がはっきりとは発生していないことを思わせる。
この指頭痕が爪形へと変わるのは、人間のなかの「不死」とされる部分、髪や爪の箇所を重んじるようになったということだ。つまり、死が意識されだしている。そういうことではないだろうか。
『琉球列島先史・原史時代における環境と文化の変遷に関する実証的研究研究論文集 第1集 琉球列島の土器・石器・貝製品・骨製品文化』
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント