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2017/07/29

イナ地名メモ

 崎山理は、「日本語の系統とオーストロネシア語起源の地名」のなかで、『古代地名語源辞典』では、「地名のイナ(伊那、伊奈)はヨナ「砂地」の転である」と見ているが、「イナ・ヨナ語源説は音韻変化的な妥当性を欠く」と指摘している。

 素人のぼくには、容易に転訛しうるように見えるから不思議だ。(yuna > iuna > ina)

 音韻変化とは別の側面からも言えることはある。

 茨城県では、「兄」のことを「いなー」と言う。喜界島では「いなっきー」(『日本方言大辞典』)。これは「胞衣」から来ている。与論で「胞衣」をしだび(年上)というのと同じことだ。つまり、胞衣は「後産」ではあるが、ここでは年長者と見なされている。

 同辞典には、「いな(異)」に、「殊勝な、感心な」という意味も載せられている。これは、「いや(嫌)」が「ありがたいさま」、「不思議なさま」という意味を持つのに近しい。

 「いなー」は竹富島では「握り飯」の意味にもなっている。

 それということは、宮古島の刺青の「握り飯」には、「胞衣」も含意されているのが示唆される。

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