イヤ地名 2
敗戦直後に刊行された『大和地名大辞典』には、奈良の小字が可能な限り収録されている。
これでカウントすると、イヤ地名は143にのぼる。うちイヤ「谷」系が55、イヤ「山」系が5と、圧倒的に「谷」系が多い。これが奈良の地勢の特徴なのか分からないが、イヤ形地名が南方系であることを示唆したもののようにも見える。
奈良を別に、イヤ地名を拾えるだけプロットしてみる。
地名イヤと胞衣ヨナとの重なりからいえば、四国にはもっと分布していいはずなのだ。
そこで思い至るのは、伊予国というのは、イヤ地名に由来しているのではないだろうか。そういう説はあるようで、Wikipedia でも、「湧水説」と「弥説」で紹介されている。(参照:「伊予国」) ぼくの考えだと、これはどちらも部分的に妥当性がある。この両者の重なるところに、正解がある気がする。
国生みにおいて、淡路も四国も、もともと「胞衣空間」だったことが引用されているわけだ。
また、高知ではヨナとしての胞衣は確認されているが、イヤ地名は見つけられていない。しかし、『日本方言大辞典』では、「いや(嫌)」の項で、福井の例として「ありがたいさま」、高知の例で「不思議なさま」を挙げている。高知市では「血統はいやなもんのーし」。この例文は、イヤ地名に通じるものだ。
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