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2017/06/09

「インセストとしての婚姻」(出口顯)

 出口顯はトーテミズムについて書いている。

このトーテミズム的分類法では、人間と動物は祖先と子孫の関係や配偶者の関係、つまり「同一者」になることがある。そのため人間が動物や魚の肉を食べるのは共食い(カニバリズム)になる。

 琉球弧のジュゴンが他のトーテムと違い特異なのは、ここでいう「配偶者」のポジションにあったことだと思う。ぼくはそれを今のところ、性の導きのような儀礼のなかで行われていたと考えている。兄妹婚に入る前に、大人になりかけた少年をジュゴンと交わらせ、家に戻ったときの準備をするのだ。

 しかし後世に伝えられたのは、出産の安全のためということだ。ただ、ジュゴン儀礼があった段階では、ジュゴンとの交接と出産が結びつけられていたわけではない。性交と出産のあいだには結びつきはまだ捉えられていないからだ。むしろ、胞衣としてのジュゴンを食べることのなかに、出産の安全は先取りされていた。ジュゴンと性交するのは、兄妹婚の先取りである。

 あるいはそうではなく、海の精霊である蛇の力の獲得が目指されていたのかもしれない。その方が、後世に海で遭難しないためと伝えられた伝承とも合致するのかもしれない。

 また出口は、インセスト・タブーは「時間」に関わっているとも指摘している。

インセストとその禁止は、時間という概念やカテゴリーの成立とかかわっている。
時間は反転循環しながらもなお可逆的に推移しているのであれば、同一視される互隔世代の間の差異あるいは時間的ズレを反復循環に還元しないで、時間の流れの中に展開させてみるなら、世代の流れは、上位から下位へ一直線に下降するものではなく、祖父母(G1)と孫(G3)が隔たりながらもなお結ばれることから、螺旋的なもの、しかもG2の世代のものは別の螺旋を形成するから、二重螺旋的なものになる。

 インセストにかかわる神話を分析するには、こうした「時間に目配り」するのが必要だと続けている。

 ぼくたちも、インセスト・タブーには、時間概念が大きく関わっていると考えてきた。親子婚の禁止は最たるものだし、兄妹婚の禁止も時間概念の獲得による空間概念の拡張に関わっている。出口から受け取るイメージは、電子が原子核の周囲を回っているようなところから、電子の回転が横にずれはじめ、二重螺旋的に進み、一方向のベクトルを持つというようなことになる。

『近親性交とそのタブー―文化人類学と自然人類学のあらたな地平』

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