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2017/06/02

波照間島の始祖神話・アラマリヌパー

 波照間島の始祖神話。

 世の始まりのとき、ただ二人の兄妹がミイクの洞窟に隠れ、油雨の大洪水に耐えて生き延びた。二人は性行為に無知であったため、最初に生まれたのは毒魚であった。次に海浜からもっと島の方へ上がって、パウイヌツヌウガンのところで妹の脇の下から百足が生まれた。そこで今度はもっと高処に上って、「白石」という地で初めて火をたき、ヤグヌハコといって、「巣」を作ったが、ここでようやく初めての人間の、アラマリヌパーが生まれた。二人の兄妹は、さらに「四つ指す」という星座をモデルにして四つの角の柱を立て、さらに真中にも一柱建てて、最初の屋敷ができ、ここで初めて男カナが生まれた。そして、波照間島の住民は皆、このアラマリヌパーとカナの子孫である。(住谷一彦、ヨーゼフ・クライナー『南西諸島の神観念』)

 これは波照間島の御嶽で祀られる最高神、アラマリヌパー(新しく生まれた女性)の起源神話とされるものだ。

 この神話の最終的な記述の位置はもちろん新しい。しかし、その視線は、「貝」段階から兄妹婚の起源へ向かって掬いあげるところにある。

 人間に先立つものとしてのトーテムは、「毒魚」そして「百足」。この「毒魚」の正体は分からない。毒蛇であれば頷きやすいのだが。「百足」はトカゲの位相を持つと思える。それが「妹の脇の下から」から生まれるのは、的を射る言葉をいまは持たないが、人間の輪郭が浮かび上がりはじめているのは分かる。

 「油雨の大洪水」は、親子婚のタブーを指し、「巣」は「貝」段階に入ったことを示唆する。ここで女性がまず生まれるのは妥当だ。

 兄妹始祖から女性始祖、そしてその次に母系社会の兄妹始祖がやってくる。厳密にいえばもうひとつ、性交と妊娠の因果を受容した後の兄妹始祖が次にくる。

 兄妹は何度もやってくるのだ。

 
『南西諸島の神観念』

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