「井戸ヌパタヌ子蛙誦言」(西表島)
西表島の「井戸ヌパタヌ子蛙誦言」の第一節。
1.井戸ヌパタヌ
アブダーマ
パニバムイ
トゥブケー
バガケラヌ生命(イヌチイ)
島トゥトゥミ
アラショウリ
翅がはえて飛ぶのは「蝶」だ。これについて、以前は、「蛙」はトーテムであり、「蝶」は人間の死後の姿だから、ここには、中間の「人間」が省略されていると見なした。(参照:「「井戸ヌパタヌ子蛙誦言」の化身の法則」)
だが、これを他界発生以前の死者との共存の段階まで遡れば、死後と未生は重なることになる。そこでは、人間にとって未生が「蛙」で死後が「蝶」であっても、そこに時間的なズレは考えられていないとしたら、「蛙」→「人間」→「蝶」は、「蛙」→「蝶」と考えられても不思議はない。それがこの第一節の意味ではないだろうか。
もうひとつ、この曲にはヴァリアントがあった。そこでは、キシノウエトカゲがジュゴンに化身している。(参照:「「カーラヌ バタサヌ アブダーマ ユングトゥ」(西表島)」)。
なぜ、キシノウエトカゲはジュゴンに化身できるのか。それは両者がトーテムだからだ。言い換えれば、この節は、ジュゴンがトーテムだった段階まで遡れることになる。
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