トーテムの系譜と島人の思考 6
もう少し緻密にしてみる。「蝶」と「ザン(ジュゴン)」は、トーテムであった段階があったと思う。ジュゴンの骨製の蝶形骨器は、何より雄弁にそのことを物語る。「蝶」は死者精霊として、「ザン」は「胞衣、兄妹」の意味を担った。
まず、「蝶」について、「霊魂」の発生とともに、「霊魂」の意味を強める。それが、「蟹」に象徴された母系社会の出現とともにトーテムから離脱するのは、これが一方向に進む時間を象徴していたからだ。そして蝶形骨器が終焉しても、シャーマンの髪飾りにはそれとして残ることになる。
「ザン」は、母系社会の出現とともにトーテムから離脱せざるをえなくなる。「ザン」は兄妹婚の象徴でもあったからだ。
「蟹」トーテムはある意味で、それだけ強力な存在だった。兄弟と姉妹からなる母系社会の象徴として、女性としての「貝」と男性としての「トカゲ」の系譜を継いでいる。
刺青が発生したとき、左手の尺骨頭部に「ザン」ではなく「貝」が描かれることになったのは、「ザン」は「母」とうより、「姉妹」を象徴するものだったからだ。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント