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2017/05/18

奄美大島の手首内側の「蝶」

 奄美大島の手首内側の文様は、蝶形骨器のデザインを手本にした「蝶」だと見なしてきた。そして、「蝶」であるからには「霊魂」を現してきたものと見なしてきた。

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 しかし、少し修正が要る。これは霊魂には違いないのだが、霊魂の位相が異なる。「蝶」は、死者の化身でもあるのは初発からしてそうなのだが、はじめは再生の象徴でもありえた。それがときを経て、再生の象徴ではなく、死者の化身のみの意味を残したのだ。

 考えてみると、「蝶」は霊魂を象徴する前に、死者の化身だった。この「死者」という概念と「霊魂」という概念の空隙は、「蝶」が再生を担うと考えられたこととかかわりがあるはずである。

 そして、霊魂が霊力を離脱するとき、「蝶」はあいまいな形で再生の環からも離脱した。「蝶」を死者の化身として尊ぶ一方、気味悪く感じたり、恐れたりするのはそのためではないだろうか。

 奄美大島の手首内側の文様は、この離脱前の「蝶」だ。蝶形骨器を手本にしているなら、この「蝶」も蝶形骨器と同じ位相を持つはずである。だから、大きく手首内側に「蝶」を描いた大島の島人は、そこに再生を託したのだ。

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