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2017/05/10

琉球語の音韻グラフ 3

 改めて、吉本隆明の濁音等価と転訛(同価)の議論を取り上げてみる。試行してきた音韻グラフに重ねるように描くと、下記が得られる。

Photo_2

 吉本は上図の線を事例から導いている。しかし、ア行-ラ行、ア行-ハ行の濁音等価については事例に出会っていないが、そうみなすことができるという仮定として置いている。吉本は上図のようなモデルを見ていたのだと思える。

 こんどは、中本正智の『琉球方言音韻の研究』から、音韻変化の例を取り上げる。中本に濁音等価と転訛(同価)の区別の問題意識はないから、どれも実線で表現する。また、転訛の方向が書かれている場合は、矢印で記す。

Photo_3

 これは、試行の音韻グラフに近づく。欠けているところを挙げてみれば、サ行-マ行は、吉本は、「通し」が「クミ」となる例を挙げていた。また、吉本も中本も挙げていない、ラ行-ア行、ア行-ハ行について、こちらで挙げる例になる。

 ラ行-ア行 「あふ」が「あろう」になる。
 ア行-ハ行 「あげー」と「はげー」

 後者など、奄美大島ではあまりに身近で気が引けるほどだが、当てはまるので仕方ない。

 これらを組み込んで、音韻グラフを更新すると、下図になる。

Photo_4

 線分が増えるのには不満が残る。数学の試験問題みたいで美的ではないし、それこそ任意の海に解体してしまいそうだ。これでいけば、カ行、タ行とハ行は万能の行で、どの行にも行けることになってしまうのも、なんだかいただけない。ただ、カ行は、発音を忌避されるように散らされている印象は受ける。ハ行音は、P音考で語れるように、琉球弧を象徴する音であると言えばいえる。

 ここで、吉本の濁音等価の問題意識は、円弧状の曲線とタ行-ヤ行に生きている。けれど、濁音等価と転訛(同価)の区別はぼくの理解が及ばないので、実線で示すより他ない。しかし、それが何ごとかを語っているのではないかと思えるのは、動植物のメタモルフォースに対応した言語のメタモルフォースに見えるからだ。


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