琉球語の音韻グラフ 2
嘉味田宗栄(かみだそうえい)の『琉球文学表現論』。この、とても魅力的なタイトルで、けれどひどく孤独な顔つきをした本。ここから、音韻変化の例を抜粋してみる。
1.二→ミ
「ニ」-「ミ」の対応で、「ニイ」が「ミイ」と音声表出される接頭語「新」は、「ミーユミ」(新婦)、「ミーメー」(新米の飯)、「ミーヤー」(新築の家、新しく分家した家)、「ミーミチ」(新開の道)など出てくる。
これは、ミ→ニで逆はないという中本正智の説とはベクトルが逆になる。しかし、新しい言葉である「新」の「ニ」を「ミ」に引っ張ったと見なすことはできる。
2.ナ←→ラ
「見せ(む)ことに」にあたる「見シラ(ナ)クトゥニ」を、「ミシ(ラ)ナークニ」又は、「ミシナークニ」と表出し述語に対する副詞的修飾語をなすことがある。「ラ」が「ナ」と表出されるのは、琉球方言に著しい舌内音〔n〕-〔r〕の交代による。
3.m←→b
さしぶ。さしもの-サシモノ-サシブヌ-サシブ
斎みうち-イミウチ-イビウチ-ウブウツ-ウブツ
貴人、貴び人、貴み人-たたみひと、たたみっちゅ、たたみちゅ
嘉味田は、「〔m〕-〔b〕の交替」と法則のように書いているが、上記はどれも嘉味田の仮説である。そして、「斎みうち」についてぼくは別の仮説を持っている。この交替は、「けむい-けぶい」のように大和言葉の例からの発想に見える。ただ、典型的な通韻例ではある。
4.イ←→ヤ
ニライ・カナイ。
ニルヤ・カナヤとも表出する。イとヤとの交替である。
これは、もともとヤ行が、イとア、ウ、オの複合でできていることから発生している。
5.リ→ニ、リ→イ
音節「リ」は、「リ」のほかに、「ニ」や「イ」になるという一般的なきまり
6.ア行→ヤ行
「ア」-「ヤ」の移行で、「あひて」が「やひて」、「あてィ」、「アティ」-「ヤティ」がみられる。
これも4に同じ。
ここで、3を視野に入れて、音韻グラフを更新してみる。
参照:「琉球語の音韻グラフ」
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