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2017/03/05

「中山伝信録」に記された刺青

 18世紀に徐葆光が記した「中山伝信録」に刺青はこう記されている。

手背には誰にも刺青がしてあり、五本の指の指背には黒い線がまっすぐ爪の先の近くまでつけられている。腕の上方にも下方にも、方形や円形、それに剃りのこしの髪の形といろいろの形がある。全部が梅鉢形というわけではない。女の子が十五歳になると、針を刺しそこを墨でぬる。年々増加してゆく。官吏の家も同様である。聞くところによると、さきの国王は、かつてこれを改めようとして、人々を集めて討議させた。結論は、昔からこうしてきており、或いは何か深いわけでもあって、やめるということはタブーかも知れず、にわかに昔からのしきたりを改めるのはよくない、というものであった。そして、とうとう現在まで続けられてきている。市場へ行って見たところ、例外はないようである。(「中山伝信録」巻第六)

 徐葆光の眼に刺青は「黒」色と映っている。腕の上方、下方がどの程度か分からない。「剃りのこしの髪の形」が何を指しているのかも分からない。「梅鉢形」は、「五つ星」のことだろうか。それとも円形の外側に円形を置くデザインがあったのだろうか。

 討議の結果、止めさせられないという結論に至ったのが面白い。

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