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2017/02/23

「沖縄における原始漁法」(西村朝日太郎)

 「沖縄における原始漁法」(西村朝日太郎、『文化人類学』1967)から。

 大神島では、鮑(あわび)は手で捕らえる。宮古島の久松では、

蟹の踏み捕えが女によって行なわれるが、男がこれを行なうと笑われる。干潮の時に蟹は砂中に潜るから女は乳辺りの深さまで水中に入り、足の裏の感触によって蟹の所在を確め、他方の足の拇趾と中趾との間に蟹を挟んでつまみ上げる。

 なるほど。ぼくはこの「足の拇趾と中趾との間に」ものを挟むのが得意だが、それはきっと島人の遺伝子なのだな。思うに、これは蟹をトーテムとしたときに流行った技術なのではないだろうか。

 喜界島では「蛸穴には私所有権が設定せられ母系を通じて相続されるという」。

 水中眼鏡の前は「油」を使っていた。海面の油越しに魚を見るということだ。油の使用はオセアニアでも認められる。

 黒島の伊古の古老が語った網の起源。昔アマワリという者が幼児から十二、三才の頃まで小児麻痺で山中に捨てられた。彼は洞窟のなかで生活しているうちに蜘蛛の巣に虫のかかるのをみて網の製作を思いつき、与那原の海岸で魚を捕ったのが網の起源。西村は、オセアニアで実際にそうされている例を挙げ、「蜘蛛の巣が人類文化の初期の段階において自然の網として利用されたと考えることは不自然ではないようである」としている。

 ペンガンは「爪先」の意味になるが、「干瀬の蟹」という説もある。後者の説には説得力がある。(pisinukan>pinukan>pingan)

 ヤシガニは、与那国ではウングヤという。ウングイは「睾丸」のことで、ウングヤは「大きな睾丸を持っている人」のこと。やはり、ヤシガニは男性に結びつけられた男性動物なのだ。

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