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2017/02/27

蛇と鷲

 アドミラルティ諸島の神話。指を切った女が、血を貝殻に貯めた。血は二つの卵となり、一つから鷲が、一つから蛇が生まれた。鷲は空を飛び、蛇は血を這った。鷲は魚を捉え母に持っていくが、蛇は捉えたものを自分だけで食べて母に何もあげなかった。

 鷲は母に二人で住もうといい、母を木の上に連れていく。それを見つけた蛇が木を登ると、鷲は石斧で蛇の頭を切り落とす。さらに蛇の体を真っ二つにした。その切れ端の一つは海に落ちて魚(あるいは鰻)になり、もうひとつは森に落ちて蛇になった。

 この神話では、天界を象徴する善なる鷲に対し、蛇は地界を象徴するネガティブな存在である。

 アドミラルティ諸島のトーテムは蛇と貝だったと考えられる。この神話は蛇の零落を示している。ニューギニアのモイ族にも似たものがある。

 竜が人々を食べてしまう。一人の妊婦が鷲に助けられる。生まれた子供は竜退治を決心する。鷲は三階建ての家をつくるよう助言。なかに魚や熱湯を置くと、竜が魚のにおいにつられてやってくる。魚を食べようとして焼石と熱湯を飲み込んだ。上で待ち構えていた息子が槍で竜にとどめを刺した。

 竜は死ぬ間際に、四日後に俺は爆発して煙があがる。母と子が見に行くと、竜の身体から、戸棚、皿、貝輪、布など、いろいろな財宝が生まれていた。村の人々は、鷲は自分たちの祖先を助けた鳥だと語り継いでいる。

 蟹が鰻・蛇の天敵となるように、天空界の生き物である鷲が蛇の対立物になるというのは、インド神話をはじめ世界各地に見られる思想である。

 空と大地と地底の精霊の主だった蛇は、三次元的な「天」の概念が生まれると、鷲に退治される。それはトーテミズムの終わりも示している。

 琉球弧で、鷹(サシバ)は、蛇に置き換えられているが、しかし蛇退治の伝承として鷹が出てくる事例にはまだ出会っていない。

 

後藤明 『「物言う魚」たち―鰻・蛇の南島神話』

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