「ティダ拝みと宮参り」(下野敏見)
下野敏見は、生児儀礼についてヤマトと琉球のちがいについて、書いている。
琉球ではティダに面会して、それもノボリティダに会って、その力をいただくことに直接の目的があり、ヤマトでは氏神に参って、その加護を祈ることに目的があった。
こういうことを自分の子供が生まれたときに知っていればなぁとつくづく思う。
さておき、ティダ拝みとは別に、「弓射り」と「蟹はわせ」は琉球のみで、「紅付け」はヤマトだけとある。
桑の木の小弓に矢をつがえて、赤子を抱いた人が東に向かい三回射る。沖縄ではミージョーキ、奄美ではサンバラと称する丸笊を的に射るところもある。
奄美大島の根瀬部では、赤子の前に立てたサンバラに向かって矢を射る。下野は、「赤子を襲う悪魔を防ぐ呪的期待があるのであろう」と書いている。
またしても、魔除けである。儀礼の古層を探ろうとするとき、最大のトラップは「魔除け」なんじゃないだろうか。
これはそういうことではなく、蛇と貝(太陽)の子として赤子がいることを明かしている。赤子が後にいるとはそういうことだろう。蛇と貝がトーテムであるということだ。
しかし、トーテム揃いにかけてはやはり龍郷の例に勝るものはなさそうだ。
大島郡龍郷村では、きまった日に名前はつけなかったが、いまでは七日のイジャンハジメ(出し初めの式)の前までにつける。イジャンのことを明り拝ましともいう。家の前庭で、男の子は桑の木でつくった弓を、女の子は鋏と針を高盆に御飯と一緒にのせ、マヨガラ(苧)という草をとってきて庭に植え、川から小がにを三匹取ってきて椀に入れておき、これを一匹ずつ赤子の頭の上にはわす。そして「イシグジマやカネクジマ(ともに貝の名)のように無事でありますように」ととなえる。かにがみつからないときは白い小石を用いる。そして、赤子を外に出して太陽を拝ませた。
赤子の額にナベヒグロ(鍋灰黒)をつけるのはなぜだろう。鍋と火は、貝つながりで分かる。蛇の斑紋を象徴化したものだろうか。ガラスヒバアの鱗の両側には、「一個の顕著な黒色のはん点がある」(『蛇(ハブ)の民俗』)。このことかもしれない。
ガラスヒバアは、蛙、イモリ、キノボリトカゲなどを捕食する。ハブが蛙を捕食することは少ない。
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