奄美の貝の主
新里貴之は、柳宗悦が発掘した万屋ナゴ浜の遺跡について、先史時代の可能性が低いとしている。ただ、面白いのは、柳によれば、シャコ貝を枕にして葬られていたことだ。
宇宿港遺跡
・右肘関節付近にイトマキボラ科の貝が出土している。
喜念原始墓・喜念クバンシャ岩陰墓
・自然状態の貝としてシラナミ(ナガジャコ)1点、リュウキュウバカガイ1点、オキニシ1点である。また、今回図化していないが、石灰華に覆われたゴホウラ破片らしきものもある。このうちオキニシ1点はヤドカリによる自然流入であると考えられる。これまでの研究からは、オオベッコウガサガイ粗孔品や無加工のシラナミ・リュウキュウバカガイは、葬具として使用された可能性がある。
・喜念原始墓でリュウキュウバカガイの自然貝が確認されているが, 大隅諸島や沖縄諸島の例から, 意図的な配置と考えたほうがよさそうである。(南西諸島における先史時代の墓制(Ⅱ) -トカラ列島・奄美諸島-)
沖永良部島のマブイグミでは、「イシクジマ、ハニクジマ ナユンタベ ソクサイ アラチ タボリ(石ひざら貝、金ひざら貝のように腰のまがるまでも息災にあらせてください)」などと唱えてから、「ホーホー」と息を吹きかけた。(甲東哲『シマの言葉』)。
「ひざら貝」は、龍郷の名づけ祝いのような場面でも登場していた。(参照:「イジャンハジメ(出し初めの式)のトーテム揃い」)
「貝交易」の貝たちは、本土では、ゴホウラの腕輪は成人男性の右腕、イモガイの腕輪は成人女性の左腕または両腕にはめられた。
ゴホウラは、奄美大島では「テルコニャー」で太陽系の名称、沖縄も含めてイモガイは男性器名称で呼ばれている。つまり、「女性」を男性が、「男性」を女性がつけたことになる。この、象徴の意味のコミュニケーションがあったかどうかは分からない。
しかも、ゴホウラはサンゴ礁の外の砂底に生息しているのに女性名称、イモガイはサンゴ礁内にいるのに男性名称になっているのも面白い。イモガイは、毒を持つのでハブとの類似を捉えたのだろうか。
ただ、ゴホウラもイモガイも、奄美の貝の主とは考えにくい。まさか、ひざら貝というのも。やっぱり、シラナミのような大型の二枚貝はもともとは主だったのではないだろうか。
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