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2016/11/17

宮古諸島の「針突き(tattoo)」デザイン2

 宮古島の針突きについては、まだ言うべきことが残されている。手の甲の他にも、手首から下の腕に頻出する文様もあるのだ。

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(図1:左・ユクズ-・ウマレバン(小原一夫『南嶋入墨考』、中央・イツクズー(五つ握り飯)宮古仲宗根所蔵本「文身研究」、右・握り飯)

 左端は、「インヌプサ(犬の足)」とも言われ、犬祖伝承を思い出させるが、ウマレバン系の名称でも呼ばれている。真ん中と右端は、ごちらも「握り飯」名称だ。つまり、これらは「貝-太陽」系にもともとの由来を持つということだ。

 市川は、五つの点の「握り飯」について、中心点は「星」で、それを囲む四つの点が「光彩」を示すと聞き取りしているが、六つの点の「握り飯」が、「貝-太陽・月」を示すのであれば、この島人の説明は間違っているわけではないと思える。ちなみに、この話者は「この感じを上布に織り出すのに大変苦労をした」と語っている。

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(図2:右から、カザマーラ、アズファカザマーラ(小原・同前)、スーカザマーラ、ヤティ・カザマーラ(宮古仲宗根所蔵本・同前))

 これらはどれも「風車」名称で呼ばれている。「タカゼン」との類縁でいえば、これも「貝-太陽」に由来していると見なせる。つまり、「ウマレバン」「握り飯」「風車」の系列は、どれも「貝-太陽」デザインのバリエーションだ。

 そして、ぜひとも取り上げたいのは、「蟹」である。

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(図3:カン(ガン)小原・同前、市川重治『南島針突行』)

 奄美大島では、巻貝の渦巻きが具象性豊かに描かれていたが、こちらはデフォルメされているが本物の「蟹」を彷彿とさせる点、素晴らしい造形だ。この「蟹」もトーテムで、左手尺骨頭部のトーテムに呼応するように、左手の腕を中心に記されている。

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(図4:左・ミズヌパナ、右・右手尺骨頭部(小原・同前))

 左の文様は、右のタカゼン系列の文様の矢の向きを反転させて得られるものだ。面白いことに左の文様は、徳之島の右手尺骨頭部と同じである。右手尺骨頭部の「タカゼン」は、「蝶」由来と「貝」由来のふたつの可能性があった。しかし、左の文様が「ミズヌパナ(水の花)」と呼ばれていることからすると、「貝」由来だと見なせることになり、文様は同じでも徳之島とは出所を異にしている。

 こうして手の甲から腕にかけてたくさんの文様を散りばめているのが宮古島の針突きデザインの特徴だ。機織りの生産と文様の数が対応しているのであれば、奄美、沖縄での拡張と宮古の多数化が対応していると考えられる。拡張して塗りつぶす代わりに、文様の数を増やしていったのである。それが年齢階梯的に行われていたものが、機織りの生産という労働に置き換わっていったとすれば、宮古では針突きが社会階層のなかに組み込まれていったことを示唆している。

 さて、他の島を見ていこう。

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(図5:池間島、小原・同前)

 宮古島と同様に点と線で構成されていることは同じだが、なんというか星雲の流れのように刻まれていて美しい。 

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(図6:多良間島、小原・同前)

 多良間島は少し趣を異にして、尺骨頭部や手首の内側は、沖永良部島と似ている。

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(図7:多良間島、左と中央・アマン(小原・同前)、右・奄美大島・ゴロマキ(山下文武『奄美の針突』)

 左と中央の文様は「アマン」と呼ばれる。ただ、多良間島では「アマン」は、「蟹」で「ヤドカリ」ではない。ぼくたちはすでに、これを「貝」の文様の痕跡を持つものとして理解することができる。中央の文様は、奄美大島の「ゴロマキ(右)」と類縁を持つものだ。

 手首内側は、「トーテム」か「蝶」であったこれまでの例を踏まえると、「貝」由来に見えるが、サンプルが少なく、判断できない。

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(図8:水納島(小原・同前))

 水納島のデザインも美しい。水納ビューティと呼びたいくらいだ。帯をなす星雲のような池間島とはちがい、星座を示すように、ひとつひとつの文様を大事にしている印象を受ける。昼は針突きを見、夜は星を見るというように、貝に発する神話空間を見つめてきたのではないだろうか。

 宮古の島々の針突きデザインを見ていると、島影ではなくて星座を頼りに航海する島人を想像させる。実際、多良間島には「星見様」が残っている。点と線は針突きは施術の古法を保存したのかもしれず、また植物トーテムを重視したのは間違いないにしても、星空との一体感も感じさせるのが宮古デザインだ。

 ※参照:「宮古諸島の「針突き(tattoo)」デザイン1」





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