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2016/11/14

与論島の「針突き(tattoo)」デザイン

 与論島になるとさらに採取数は少なくなる。典型例は下になる。

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(図1:与論島、小原一夫『南嶋入墨考』)

 しかし、採取数は少なくても示唆することがないわけではない。

 まず、トーテムの座である左手尺骨頭部は、昔の砂糖キャンディ(名前が思い出せない)のような星型だ。

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(図2:左手尺骨頭部、小原・同前)

 これはアマンと呼ばれているが、同じくそう呼ばれた沖永良部島の同位置の文様と並べてみれば、「貝」に由来しているのが分かる。

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(図3:沖永良部島、左手尺骨頭部、小原・同前)

 与論の場合は、貝-太陽を意識していると言える。

 霊魂の座の右手尺骨頭部は、2タイプ見られる。

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(図4:与論島、右手尺骨頭部、小原・同前)

 これを見ると、十字を得たことで、三角形の配置に自由度が生まれているように見える。


 与論で示唆を提供してくれるのは、手首内側の文様だ。左手には次の4パターンが見られる。

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(図5:与論島、左手首内側、小原・同前)

 四つ目のパターンは、塗りつぶされた四角「■」である。興味深いのは、これが「後生の門(仏の道)」と呼ばれたことだ。その意味は、ここを祖先に調べられたこの印のある者は後生に入れられるとされた。サンゴ礁の思考の神話空間では、「あの世への門」とは、貝の口のことだ。この文様の場合、真ん中に空けられた円や、素肌を残した四角形の対角線としてそれは示されている。つまり、「貝」は四角形で表現されることもあり得るのである。

 しかも、右手首の内側は、「■」「●」の両方があるが、この「■」が「月」と呼ばれているのだ。ここでも四角形であることは「月」の意味を損なっていない。そして、左手の「後生の門」が「貝」なら、右手の「月」は、貝から生み出されている太陽や月を表現していることになる。手首内側では、左右を一対として、地味ながら島人の世界観を反映させている。

 これは与論島の針突きの特徴として特筆すべきことだと思う。そして特筆といえばもうひとつ、右手尺骨頭部の「五つ星」文様が「蝶」であるという記録は与論島に残されていたものだった。この記録は、琉球弧全体に寄与できるものだ。






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