「太陽を生みだした母なる子宮」(名護博)
『赤椀の世直し』のなかで名護博は書いている。
ゴホウラに太陽の縁由のある名がつけられたのは、太陽が海底をも照らすからであろうと考えたがそれよりは海底の巻き貝類が(ウミニナ)が太陽を生みだした母なる子宮であると古代人たちが考えたから、とすべきと思う。そのように考えたほうが「テダノスウ」にも意味を与えやすい。「テダノスウ」は太陽の巣、または太陽の主といった意味であった可能性が考えられる。いずれにしても太陽の大本、すなわち太陽の母なる子宮になり、谷川氏自身が熱心に追い求めた「テダが穴(太陽の穴)」の原形であった可能性が浮かび上がってくる。太陽がそこから生まれ、夕暮れどきにはそこに沈んで隠れるという『おもろさうし』に頻繁に出てくる「テダが穴」は、もともとは深い海の底の巻き貝のことであった、とした方が古代人の心に近いと思う。
これはその通りだ。ただ、太陽の母の貝は、巻き貝に限らない。シャコ貝こそはもっともそれにふさわしい貝だ。琉球弧の島々では、それぞれのサンゴ礁の海で、太陽の主に当たる貝たちを見つけていったのだと思える。
久高島の漁師たちから聞いたマガキガイの沖縄名は「ティララ」であった。男たちの説明によれば、「ティララ」はティラ(太陽)が照る時だけに底から上がってくるのでその名があるという。
ティララ(マガキガイ)については、底から上がってきて太陽を生むのである。素敵な見立てだ。
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