メンタワイ族の他界観
トライバル・タトゥのある部族として、メンタワイ族を知ったので、彼らの死生観を見てみる(cf.「メンタワイトライバルタトゥー」)。
メンタワイでは、「死者は三日間墓辺をさまよってからあの世へ行く」。「あの世」は場がい島西岸の沖合いにあり、「大きな村」と呼ばれる。「あの世」での生活は「この世」とあまり変わらない。「漁撈や耕作をなすが、狩猟は行わない」。
「夢や病気の時に身体を去る霊魂」、simagere
「死ぬ時に身体を去る霊魂」、ketsat
ボルネオとは異なり、相当「呪術が発達している」。
例えば、人を病気にするために、目標とする人の持物を沼に沈めてその品物の朽ちるごとく所有者を病気にしたり、また品物を木の上にかけ、それが陽に焼けるにつれて熱病にかからせる方法も取る。共に死霊の力を借りて行うけれども、元来これらの方法による病気は霊魂の喪失によるものとは観念系統を異にしているから、この種の病気になった者は毒物(tae)を抽出して治してもらわねばならない。(棚瀬襄爾『他界観念の原始形態』)
これを見る限り、メンタワイ族は霊力思考が強く、病因が霊力に依るものとされていて、治療法を呪物を取り除くことに力点を置いている。
にもかかわらず、霊魂の観念は発生しているので、霊魂の離脱とその捕捉という病因と治療も存在している。はっきりは分からないが他界はすでに遠隔化しているかもしれない。
霊力思考を強く残すメンタワイ族も、霊魂の観念は発生しているので、それが刺青の根拠になっていると考えられる。棚瀬の資料には、トーテムの記述はないので、刺青デザインの意味は分からない。
メンタワイトライバルタトゥーのデザインにはわずかな個人的偏差はあるものの、基本的には誰もが同じパターンで、男のデザインと女のデザインの2種類のみです。スケールとしては顔面と指先をも含む総身彫りで、構成要素は点と線による表現を主体としています。(Mentawai)
この記述からすると、取材でまだ分かることはあるかもしれない。メンタワイ族の霊魂観からすれば、彼らの刺青は初々しいのではなかと思える。
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