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2016/10/22

「刺青師としての女性たち-フィリピン、台湾、そして沖縄」(アナリン・サルバドール・アモレス)

 アナリン・サルバドール・アモレスという方の論文。対象にしているのは、「フィリピンのカリンガ州、台湾のアタヤル族の共同体、そして沖縄」だ。

 刺青を意味する言葉。

 バトク(カリンガ州)
 パタサン(アタヤル族)
 ハジチ(沖縄)

 共通性は、女性の刺青師(カリンガ州では男性も刺青を行い、刺青師もが一般的)。アタヤル族では、

織物と刺青の仕事は女性たちに限定されており、その技術は、女性の近親者である母から娘へと受け継がれる場合もあれば、徒弟関係の中で習得される場合もあった。

 「刺青に関する儀式を行うことを通して、身体は「アーカイブ」となる」。

 カリンガ州。13~15才の間に行う。バツ(×)の印か並行する線の刺青を頬か額に施す。痛みに耐えられるなら、「両腕、首の下と手」。
 アタヤル族。5才。アイデンティティの刻印として額に線形の刺青。未婚で15才になった時は、成人のシンボルとして、より手の込んだ刺青を頬に。
 アモレスは沖縄については、7~10才。手の甲に斑点などの刺青を入れ、12~13才、そして「人生の重要な出来事があるたびに」としている。

 アタヤル族では、「刺青がない人たちは本物の人間ではなく、猿と同じだとされ、顔に刺青のない女性とは誰も結婚したがらなかった」。

 ガガは、「規範、規則、そして儀式的な決まりごと、個人のアイデンティティ、幸運、「祖先の霊」であるリュートゥクスと交信できることを意味する」。女性の顔の刺青は「顔にあるガガ」を表し、ダイヤモンドの模様は祖先の霊を表す。

 このダイヤモンドの模様は、アタヤル族のトーテムに由来する文様かもしれない。

 アモレスは沖縄について、

ハジチは沖縄の人たちの「先住性」を表す手段ともなった。この時代、ハジチのない女性は日本の他の場所に追放、もしくは沖縄から流刑に処せられることになり、そこで「外国人」として扱われた。

 と書いているが、これは資料の読み違えではないだろうか(この辺の記述は、ジョージ・カーを元にしているように見える)。

 アモレスは刺青についてこう整理している。

 1.身体的な美学
 2.子供から大人へ移り変わる通過儀礼のシンボル、他者からみた社会的役割の反映
 3.悪霊から身を守るもの
 4.アイデンティティと地位を刻印するもの
 5.祖先の霊とつながるための一つの形態
 6.平等をもたらし、コミュニティの結束を図るための社会的統制の手段
 7.死後の世界へと続くもの

 カリンガ州では、キリスト教の布教が「禁止」の契機のひとつになっている。アモレスは「衣服がもたらされたことにより、刺青の可視性が失われた」と書いているが、これは本質的にいえば、衣服がもたらされたことで、霊魂のファッションとしての身体が失われる契機になった。

 沖縄についても書いている。

ハジチは日本人の感覚にとってはいらだたしいもので、日本のナショナリズムの強い閉鎖性は、沖縄の人たちを日本社会の完全な一員として簡単には認めなかった。
沖縄では、ハジチが実践されなくなって久しいが、実践を保存した記録によって、その実践を分析することで、過去に行われていたハジチの価値を理解するためのドアが開かれることだろう。

 これこそまさにぼくのやりたいことだ。

 

『沖縄ジェンダー学 3 交差するアイデンティティ』

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