祖先神としての神衣
内田順子は書いている。
ウヤーンの祭儀では、女性の神役たちは、「インパニ」や「キャーン」と呼ばれる蔓草でつくった草冠[カウスと称す。祭儀の場面によっては「ウプバー」という葉を用いることもある]をつけ、手にはリュウキュウグミモドキの小枝を束ねたもの[テーフサと称す]や、リュウキュウガキの杖[ジーグスと称す]を持ち、トウズルモドキの帯[ダギフと称す]を締める。それが、祖先紳、すなわちウヤーンの姿である。
これはとてもありがたい記述だが、もうひとつ要素はあると思う。
吉野裕子は、宮古島の祖神祭りにおける神衣について書いている。
祖神祭りにおける神衣は、こもりを終えて祖神となった巫女達、つまり現人神たちの神服であり、「ウプギヌ」とよばれる。それは多分「産衣」であろう。図の如くそれは無衽、半巾袖。袖は無袖に近く、また衽がないからその原型は方形といえよう。エリは恐らく後世の附加ではないだろうか。そのもっとも注意されることはその着装法である。肩と首のところで見頃を交叉させ、見頃の前後をタスキ状にするのである。(『祭りの原理』)
吉野の問題意識とは違うのだが、ぼくもこの着装法を知りたかった。
草冠 蛇
手房 蛇とシャコ貝
杖 蛇とシャコ貝
帯 蛇?
神衣 苧麻
襷 シャコ貝
蛇とシャコ貝と苧麻。これをそろえて祖先になるわけだ。ちなみに吉野がタスキにこだわったのは、産衣との関連をつけるためだ。ぼくたちの関心事からいえば、産衣に似せているとすれは、産衣は胞衣着と見なすと、サンゴ礁の象徴化という意味になる。
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