『扇―性と古代信仰』(吉野裕子)
吉野裕子の『扇―性と古代信仰』を面白く読んだ。考えなければならないと思ったのは、「扇」は「蛇」だけではなく、「蛇と貝」だとしても、扇の祖形の「蒲葵」は、島人が貝に出会うよりも前に、衣裳として蒲葵とは付き合っていたのだから、吉野は初源を捉えているとも言える。
しかし、その段階の蛇は、男性としての蛇ではなく、無性の蛇であったはずだ。
『おもろさうし』の「にらいとよむ大ぬし」が、性別不詳であり、夫も妻もいないように見えるのは、この独神段階の「蛇」に淵源を持つのかもしれない。
発見だったのは、吉野に寄せられたという岡本恵昭の実録に神々の衣裳への言及があったことだ。
この山下りの神々の衣裳の腰に蒲葵の葉を裂いたものを前結びにしてつける。これを「神の羽」といってこの神羽(かんぱね)によって神の天降りが実証されるのである。
つまり、帯も「蛇と貝」というわけだ。
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