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2016/10/23

「日本神話の風土性―時間と変容」(谷川健一)

 谷川健一は、「日本神話の風土性--時間と変容」のなかで書いている(「國文學:解釈と教材の研究(日本の神話<特集>日本神話の源流)」)。

 南島では神女の着る着物は神羽(かんぱね)と呼ばれる。羽というのはあけず羽(とんぼの羽)、または、はべる羽(蝶の羽)に見立てたものである。高級神女の打掛けには「おもろさうし」に言う「絵かき御羽(えがきみはね)」があった。これは彩色した花鳥の模様の着物で、要するに天の羽衣にほかならなかった。宮古島の狩俣や島尻のツカサ(神女)は神祭のときに着る白い神衣の帯に、模様のあるほそながい帛(きれ)を垂らしている。この帛を神羽(かんぱに)と呼んでいる。つまりそれは神聖な神衣裳のシンボルなのである。

 この谷川の文章中、前段の箇所は、伊波普猷の記述を拝借しているのは分かる。

そして南島文化の中心から漸次「上下、地はなれ」(田舎および属島)に伝播したことは、この時代の神歌中に北部地方の神女の首里王府から「絵がき御羽(みはね)」を交付されることを歌ったのがあるのを見ても知れよう。これには胡蝶形(はべるがた)または蜻蛉御衣(あけづろみそ)ともいって、いまだに所々に保存されているが、私はかつて久高島の外間祝女の家で白地の絹布に花鳥の絵のかいたものを見たことがある。(「琉球女人の被服」)

 問題は、宮古島のツカサが帯に垂らしている帛を「神羽(かんぱに)」と呼ぶか、だ。そう書いているのだから、信頼してみる。この神羽は、神女の衣裳が「天の羽衣」化する以前にもあったかどうか、だ。

 パニ(羽)という言葉は随所に出てくる。

 バサパニ(芭蕉布の神衣裳) (居駒永幸『歌の原初へ 宮古島狩俣の神歌と神話』)
 バサのパニ(芭蕉の神衣) (内田順子『宮古島狩俣の神歌 その継承と創成』)
 インパニ(草冠になる蔓草) (内田順子『宮古島狩俣の神歌 その継承と創成』)
 ブーパニ(麻の神衣装) (居駒永幸「宮古島狩俣の神歌体系--タービ・フサ・ニーラーグの様式から」「明治大学人文科学研究所紀要」)

 このパニが、「天の羽衣」以前に届くなら、羽は「蝶」由来の可能性を持ち、宮古島の原ユタにおいても「蝶」表現を潜在的ながら持つ可能性がある。


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