「出雲-常世への憧れ」(谷川健一)
谷川健一は、「出雲-常世への憧れ」のなかで、加賀の潜戸にまつわる佐太大神の誕生について書いている。
黄金の矢をもつ太陽神が、暗い洞穴に矢をはなつ、とは太陽神と、それをまつる巫女の交合の儀式を意味するのである。
これは、蛇である「黄金の矢」と太陽の化身との交合を意味している。
ここで谷川は、
かつて沖縄では、「太陽が穴」を守る巫女が祭りの終りの日に、洞窟内の鍾乳石(石筍)に向かって自分の下腹部をこすりつけけ、それで神との交合の儀式をおこなったというが、それは太陽神の子を生むための儀礼にほかならなかった。
と書いている。ところが、「太陽の洞窟」では、宮古島万古山の御嶽の近きにある洞窟には傘石(陰陽石)があり、神女は七晩ここにこもり、八日目の朝、太陽を誕生させるための用意をする。「これから類推するとそこで、太陽の親神と神女との儀礼的な 交媾がおこなわれることも、考えられておかしくない」。ここでは類推として書いているのだ。
『埋もれた日本地図』が1972年刊で、『黒潮の民俗学』が1976年刊だから、この4年間で確かめることができたのだろうか。谷川の文章は、類推がいつの間にか事実に変わる印象を受けるときがあるので、交合の儀礼はあったにしても、その所作については保留しておきたい。
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