『生命記憶を探る旅: 三木成夫の生命哲学』(西原克成)
三木成夫への理解を深めるつもりで読んだのだが、著者の業績を辿る旅になっていて最初は面食らったが、面白かった。
三木の本のなかでも最も印象的な胎児の上陸劇は、西原によっても強調されている。
上陸して本能的にのたうちまわって血圧が高まると、ミトコンドリアの細胞呼吸のはたらきが高まり、冷血動物から温血動物への道をたどる。このステージで水呼吸用のエラから空気呼吸の肺が発生。低血圧・低体温の冷血動物の細胞内には、ウィルスと多数の細菌類が共存することが知られている。これが細胞内に共存するとため、微生物の遺伝子ゲノムは体細胞核の遺伝子に取り込まれて、ジャンクゲノムとなる。
ヒトも冷血動物から進化しているから、からだを冷やすと自動的に冷血動物のシステムが作動して、腸内の常在微生物が白血球に抱えられてからだぢゅうを巡り、あちこちの組織に細胞内感染症を起こす。また、「上陸劇」の前後では、「対組織免疫系」も「対微生物免疫系」もそもに「免疫寛容」となっている。
この発生の仕組みから導かれる悪習慣は、著者によれば「口呼吸」、「冷中毒」、「骨休め不足」。
1.「口ぽかん(=口呼吸)は、阿呆のあかし」
2.「腹を冷やさない」
3.「及ばざるは過ぎたるに勝れり」
4.「朝寝、朝酒、朝湯は身上をつぶす」
5.「接して漏らさず」
6.「快食・快便」
7.「寝相を正して早寝・早起き」
身体を冷やすと冷血動物のシステムが作動して、腸内の常在微生物が身体中をめぐり細胞内感染症を引き起こすというのが、いちばん分かりやすかった。
著者は腸管を三つに分けている。呼吸の「鰓(さい)腸」、胃腸の「腹腸」、「はい腸」。
「鰓(さい)腸」は、肺と顔を含めた横隔膜から頭側の部分。精神や思考にかかわる、ヒトの文化、経済活動のすべて。心臓があるので、ここと横隔膜にこころが宿る。
「腹腸」は「食の相」。はらわた。人間の本心が宿る。所有欲の源ともなる。
「はい腸」は、内容物がたまるとうずき排出すると喜びが生じる。「鰓(さい)腸」から湧き出る「精神」や「思想」と「はい腸からこみ上げる「情念」や「こころ」は相克し、なかなか相容れることがない。
著者はこれらの成果を、「三木形態学」を道しるべとした「重力進化学」と呼んでいる。
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