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2016/09/15

宮古、八重山のマブイグミ

 宮古、八重山のマブイグミについて、酒井卯作の『琉球列島の死霊祭祀の構造』から列記してみる。

1.宮古島ではタマシウカビともいう。離島ではタマシツケというところも多い。

・カンカカリヤが茅を二片か三片もってきて水の入った椀にいれ、指でかきまわしうまく茅がくっついていると、魂がついているという。

2.平良市松原では、魂を失くしたところから小石を拾ってきて椀に入れ、さらにフキ(木片)を添えて、魂に帰るように呼びかけて、病人に小石を抱かせる。

3.島尻では、タマスアビュー(魂浴びせ)という。魂を落としたと、トキ、ツカサから告げられると、その場所に行って小石一個を拾って拝む。供物はご飯二椀、茶碗にススキ二枚を水に浮かべる。拝んでいるうちに二枚の葉がくっついたら魂が入ったという。拝み終わると、本人に供物をあげさせる。落した場所が分からないときは、門口で魂を迎えるツカサもいる。島外で落としたと分かると、港の桟橋で迎える。

4.西表島古見では、魂を落とした場所に行って、石や土をその子の懐に入れてやる。自分の家で失ったときは、麻(チョマ)を首にかけ、線香と花米を床の間に供えた。いちばん効用があるのは便所。そこで、「マブイを返してください」といいながら麻紐で一つの輪をつくり、線香の上を二、三回まわして病人の足首、手首を締めるとマブイが戻る。

5.波照間島では、サコウの葉を煮て刻み、味噌で揚げてゴマをまぜて少しずつ子供に食べさせる。

6.石垣島川平では、タマシツケという。落とした場所に行って魂を込める。「タマシトリのフルメー」といって花米、酒などを供えて、麻紐の中程を三、四結んで、落としたところで着物に包んで持ち帰り、子供の首にそえてかけてやる。便所の神が高位だからといってそこから魂を取ってくる場合もある。

 宮古島離島、石垣島でいう「タマシツケ」、島尻での「タマスアビュー」は霊力思考としての表現だ。宮古島でいう「タマスウカビ」はどうだろう。「ウカビ」は「浮かび」と解していいかどうか分からない。ただ、島尻などで二枚の葉がくっつくというのは、「着ける」とも「憑ける」ともなり両義的だ。

 二枚の葉がくっつくというのは、古見や石垣島川平で、麻で足首、手首を締めたり、首にかけたりする仕草を象徴化したものだともいえる。この場合も、霊力的な表現に見える。また、子供の身体も植物と見なしている視線を感じるし霊魂も植物由来で発想しているようにも見える。

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