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2016/09/11

種子島広田のガロー山

 種子島広田は泉を中心に親族が組まれている。元旦には一番水を待ち構えていた人たちが先を争って若水を汲んだ。

 広田には、ガロー山が9つもある。ガロー山は、種子島の聖地であり、ガローの神のトリ木の根元には、ガル石(菊面石の類)の小塊を積んである。

 1つのガローについてだけ、「ガローは蛇の神さま」と言われている。「ガローと祖霊との関係を示す口碑は何もない」。ガローは村落民の「鎮守の森」でもある。

 ガローは田の周辺にある。それはガローの発生時期を示している。

同時にそれは、人々が新しい生活を開始した時期であると思われる。すなわち、新しい生産様式の下に、新しい居住地を定めた時期であるようだ。(下野敏見『種子島の民俗〈1〉』)

 「井戸を中心にして村落が形成され、その物質的遅延的結合に対して、ガロー山が精神的血縁的結合の象徴となって」いる。

 これらの下野の記述を琉球弧の方からみれば、ガロー山が「御嶽の森」に当たることが分かる。

 広田では石塔祭りで「精霊流し」が行なわれる。種子島では、死者の霊魂は「先の世」に赴くと言われる。葬式やその手伝いは、「ホネカミ(骨噛み)」と呼ばれている。(飯島吉晴「民俗的環境」『種子島広田遺跡. 本文編』)

 若水といい「蛇の神様」といいホネカミといい、広田の島人も「脱皮」を重視したことがうかがえる。これは貝符の文様に示唆を与えるものだ。縄文の「あの世」は、石塔山に該当するだろうか。それにしても、ガロー山が村落に9つもあるのが目を引く。


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