『謎のサルタヒコ』
気になる点を列記してメモしていく。
猿田彦は「衢(ちまた)の神」、「祖(さえ)の神」。「祖(さえ)の神」は「岐(ふなと)の神」。「この神さまが黄泉国との境を守っている」。
いわば杖からクナトノサエノカミとして猿田彦を誕生させているわけです。それによって黄泉国から雷であるとか、まがまがしいものが地上に入ることを防ぐ働きをする神さまとして岐神、猿田彦は誕生しているのです(吉田敦彦)。
「道案内として天と地の境目である衢、そこが猿田彦がいわば守るべき場所なんです」。境を守ると同時に、「他界にまで導くような力を持った神さま」。
天の八衢というのは天の交差点であって、そこに立って待ち受けている祖の神、あるいは岐の神としての猿田彦は、その境を守ると同時に、こちらとあちらを媒介する、その両方の役割を持っている(鎌田東二)。
「アメノウズメが裸になる、性器を露出するというのは必ず太陽の道を拓くのとかかわっているわけです(吉田)」。
加賀の潜戸(くけど)は、佐太大神の生誕の地。旧潜戸には賽の河原がある。新潜戸は佐太大神の生誕の地。佐太大神には、猿田彦大神との同一説がある。
佐多大神の母は、キサカヒメ。キサカ(ガ)ヒメは、大国主神の遺体を拾い集め、ウムガヒヒメの母の乳汁とともに塗り込めて再生せしめた女神。サダの神は、貝の女神を母神としている。
風神のマスラ神と、大地と海の貝であるキサカヒメの子宮すなわち洞窟から光輝く神としてのサダの神が誕生したのだ。(中略)加賀の潜戸は沖縄の信仰にみられる「太陽が穴」と深く通じているように思われる。サダの神は太陽の大神なのではないか。まさしく加賀の潜戸は、太陽の御子神としての太陽の大神の誕生をするにふさわしい「闇き岩屋」なのである。(鎌田)
宮古島のサダル神、老婆は冠を被り赤い頭巾をかぶっている。「赤」は悪霊を退ける。御嶽にはシャコ貝がある。魔除け。シャコ貝は殻が最大の二枚貝で、上の殻と下の殻がぴたっと上下に噛みあう。その様子が十字形に見える。
沖縄の寿司屋に行きますとシャコ貝の寿司が出る。これをギラと言う。そういう言い方もありますが、アザカーとかアジクャーという言い方もある。両方あるんです。(谷川健一)
猿田彦の「原点はサダル神」。アメノウズメは「目勝ち」。目の呪力を持つ婦女。ウズは海蛇。宮古島では虹が天の蛇。
アマテラスとサルタヒコは、日本神話における二種の太陽神であると私は思う。前者は天皇家につながる、新たなる天津神の主宰者としての太陽神であり国家神、後者は土着先住の国津神の中の太陽神。(鎌田)
(大石窟伝承は)洞窟からの日神アマテラスの出現であり、さらにいえば洞窟に象徴された母胎からの日神の誕生である。すなわち乳房や女陰を露出したウズメの踊りは、出産を模倣した類間呪術による迎神の祭儀と考えられる。(神崎勝)。
サルタヒコに対峙したウズメは、「サルタヒコの邪視を克服する呪術と言われる」。しかし、そうではなく、「出産をモチーフとする迎神儀礼によって、サルタヒコを出迎える母神でなければならない」。
ハマグリの化身である女神ウムカヒメは、鳥を化して大空を飛翔すると信じられていたのである。貝の化身としての海の女神たちは、ときに鳥となって空を翔けつつ潮路を引く船を見守っていたのであろう。(神崎)。
貝に挟まれて溺れ死ぬサルタヒコ。これは、「魚介の捕獲を類間呪術的に表現した「漁の呪儀」の神話にほかならなかった」(神崎)
海の女神ウズメとその御子神である日神サルタヒコの信仰伝承。
以下、メモ。
これらを読むと、シャコ貝は太陽神で、蛇は海神という見立ては間違っていないようだ。
サルタヒコもアメノウズメも、シャコ貝である太陽神と蛇である海神との子だ。だから、両者には太陽と蛇の面影が宿る。
サルタヒコが貝に生まれ、貝に死ぬのは、貝の一生を思わせる。それはひとつの津波と次の津波のあいだの時間でもある。また、トーテミズムの終わりで、ここで貝は海の貝に戻る。口を切られた海鼠も海の海鼠になってしまう。
アメノウズメの踊りは、シャーマン踊りで、性器を露出するのは、貝が口を開いて太陽が昇るのと同じことを意味した呪術だ。海鼠の口を切ったのは、貝の口を閉じたのだ。
サルタヒコが、蛇とシャコ貝の子神でありながら境界の神でもあるのは、琉球弧の葬地で、貝に包まれた遺体が、洞窟の入口へ、そして道へと場所を移行する段階に対応している。
サルタヒコの太陽の子神とアマテラスの太陽神とでは位相が異なっている。サルタヒコは、母を太陽とするが、アマテラスの祖神は父を太陽としており、それを自身を太陽の化身としたところでアマテラスは生まれている。
開いた貝は太陽になり、閉じた貝は十字になる。魔除けの意味は閉じた貝に淵源している。
また、「太陽が穴」は、大きなシャコ貝の端が見立てられていただろう。
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